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【記者解説】実効性は不透明 米軍リバティー制度一元化 際立つ、対応の遅さ


【記者解説】実効性は不透明 米軍リバティー制度一元化 際立つ、対応の遅さ ゲート通りを歩く米軍関係者とみられる人々=5日午前0時頃、沖縄市の同所
この記事を書いた人 Avatar photo 琉球新報朝刊

 在沖米軍トップのロジャー・ターナー四軍調整官とエマニュエル駐日米大使の連名による見解文では、米兵による性的暴行事件を受け、基地外で米軍人の行動を規制する「リバティー制度」の一元化や強化を図るなどの対応策を示した。しかし、具体的な内容や時期については明記されていない。実効性は不透明としか言い様がない。

 これまでにも軍人や軍属による重大事件が発生するたびに、米軍は再発防止のために米軍人の外出や飲酒の規制を強化してきた。例えば2016年に那覇市内で発生した米兵による女性暴行事件では、発生から3日後に四軍調整官が県庁を訪れ翁長雄志知事(当時)に「事件へのおわび」を伝えた。同日に米海兵隊はリバティー制度を改定し、浦添市の牧港補給地区より南の地域で宿泊することを禁止した。

 一方で今回は、対応の遅さが際立つ。空軍兵による少女誘拐暴行事件の発生から半年以上が経過した6月末、嘉手納基地の第18航空団は本紙の質問に「リバティー制度の変更について判断するのは時期尚早だ」との見解を示した。いまだに米軍が公式には謝罪の言葉を発表していないことも含め、被告が起訴事実を否認していることから、推定無罪の原則を重視しているとみられる。

 しかし、被告が最終的に有罪になるか無罪になるかにかかわらず、事件の発生を防止するための教育や規制は、仮にも「良き隣人」を名乗るなら本来は必要不可欠なはずだ。米軍人の外出が例年多くなる7月4日の米独立記念日が過ぎてから、ようやく規制についての見解を発表した米軍の姿勢からは、今回の対応策もまた、これまでと同様にいつの間にか緩和され形骸化するのではないかという懸念を拭えない。米軍の「自浄作用」は決して信頼されていない。米軍は、規制の現状が県民に見えるように透明化し、県民の声に真摯(しんし)に耳を傾けなければならない。

  (沖田有吾)