【ワシントン共同=木梨孝亮】米国のエマニュエル駐日大使が11月下旬に離任する意向を周囲に伝えていることが9日、分かった。米国の感謝祭(11月28日)前後に日本を離れることを検討している。11月5日の大統領選で民主党候補のハリス副大統領が勝利した場合は、政権移行に関与したい考えだ。米政府関係者が明らかにした。
共和党大統領候補のトランプ前大統領が勝利すれば、駐日大使の交代は確実。複数の関係者によると、エマニュエル氏は次期大使が決まるまで務めるのではなく、次の政界ポスト探しを進めたい考えという。
ニュースサイト、アクシオスは、ハリス氏が当選すれば、国家安全保障問題担当の大統領補佐官に起用されるとの観測があると報じている。
エマニュエル氏は中国に対する厳しい姿勢で知られ、バイデン大統領との関係の近さも武器に日米関係の発展に力を発揮した。5月には駐日米大使として初めて与那国町を訪問し、陸上自衛隊駐屯地などを視察。駐日米大使の与那国訪問について報道陣に「中国にとって都合のいいものではない」と述べ、中国をけん制した。長崎市が今月9日に主催した「原爆の日」の平和祈念式典にイスラエルを招待しなかったことを理由に欠席し、物議を醸した。
エマニュエル氏はもともとバイデン政権1期目のみ駐日大使を務める意向だった。2022年1月に着任し「今後3年間が、今後30年の日米関係を決める」と繰り返し語っていた。
エマニュエル氏は下院議員を経て、2009~10年にオバマ大統領の首席補佐官を務めた。オバマ氏の地元でもあるシカゴの市長に転身し、19年まで2期務めた。
豪腕大使、割れる評価 日米関係強化、物議も数々
11月に離任する意向を周囲に示したエマニュエル駐日米大使は、オバマ元大統領やバイデン大統領との関係の近さから強い影響力を誇り、日米関係の発展に寄与した。一方で政治的なパフォーマンスが目立つとの指摘もあり、数々の物議を醸した。評価は割れる。
クリントン政権で大統領補佐官や大統領顧問を務め、下院議員を経て、オバマ政権ではホワイトハウスを取り仕切る大統領首席補佐官として活躍した。民主党政権で要職を歴任した大物だ。
豪腕だがかつてライバルの自宅に「君との仕事はひどいものだった」との手紙と一緒に魚の死骸を送りつけた激しい気性で知られる。
最近も長崎市が9日の「原爆の日」に主催した平和祈念式典にイスラエルを招待しなかったことを理由に式典をボイコット。原爆投下の当事国を代表する大使として、こうした振る舞いが適切なのかと疑問視する見方もあった。
だが日米同盟発展に尽力したのも事実だ。日米韓3カ国首脳会談の定例化に向けても奔走し、中国をにらんでインド太平洋地域で友好・同盟国との関係構築に努めた。
11月の米大統領選で民主党候補のハリス副大統領が当選すれば、国家安全保障問題担当の大統領補佐官に起用されるとの観測もある。日本政府関係者は「知日派のエマニュエル氏が米政権の要職に就くとすれば歓迎だ」と話した。