5日に明らかになった米兵女性暴行事件を巡っては、県警が容疑者の米海兵隊員を書類送検したのと同じ日に、県に情報を伝えた。ただ、7月に政府が見直すと発表した情報伝達体制に基づくものではなく、県と県警の間で確認された運用改善によるものだ。
在日米軍による事件・事故については、1997年に日米が合意した通報手続きに基づいて、米側から連絡を受けた外務省などの政府機関から、沖縄防衛局を通じて県や市町村に伝えられることになっている。その目的は日米共通の認識として「日本側関係当局の迅速な対応を確保し、事件事故が地域社会に及ぼす影響を最小限のものとするため」と明記された。
しかし、6月に相次いで明らかになった米兵による性的暴行事件では、いずれも県に対して情報が伝えられていなかった。外務省は取材に対し、全ての事件が通報対象ではないという認識を示し、捜査当局が発表しなかったことを踏まえて通報しなかったと回答した。市民団体などからは「政府による事件の隠ぺいではないか」と指摘する声も上がっていた。
林芳正官房長官は7月5日、情報の共有について見直すことを発表。捜査当局による事件処理が終了した後に、対象の自治体に「例外なく」伝達すると説明した。ただ、県などによると政府から県へ伝達されるのは「検察が起訴について判断した段階」だという。今回の事件では、書類送検を受けて那覇地検が今後起訴の判断をするため、政府からの伝達は当面先になるとみられる。
情報提供について、県と県警は政府の見直し発表と同じ7月5日、運用改善をすることを確認した。県警は逮捕事件では逮捕後、不拘束の事件では書類送検の後に、那覇地検と相談し被害者のプライバシーに考慮した上で、事案の概要などを県に説明する。
今回の事件では、県警は送検と同日に県に情報を伝えており、7月に確認された運用改善に沿ったものと言える。一方で、それでも発生から約2カ月半が経過している。「事件事故が地域社会に及ぼす影響を最小限のものとするため」に定められた97年合意が形骸化している面は否めない。 (沖田有吾)