8日午後9時45分ごろ、真志喜公民館で当選確実の報を受けた佐喜真淳氏。選挙戦で公約に掲げた米軍普天間飛行場所属機の名護市辺野古新基地への段階的移駐と返還期日の明確化について、どのように取り組むかを報道陣から問われ「これから自民党総裁選が行われ、新たな総理が決まる。タイミングを計りながら要請したい」と述べるにとどめた。
ところが2日後の10日、木原稔防衛相は会見で佐喜真氏のこれら二つの公約について「現在の計画に基づいて着実に工事を進めていく」と述べ、取り組むのは困難との見方を示した。
木原氏は仮に段階的な移駐に取り組む場合、離着陸に必要な格納庫や燃料施設などを仮設して撤去する必要があるとして「工程が追加される。全体的な工期に影響を与える懸念がある」とした。
政府の試算では新基地建設は12年以上かかるとされる。1月に大浦湾側の工事が始まったのを起点に12年のカウントダウンが始まったが、木原氏は返還期日について「現段階で具体的に示すことは困難」とした。ある防衛省幹部は「今後の工事の進展なども見なければならない。不確実なことを言う訳にいかない」と語り、工期そのものが延びる可能性もある。
佐喜真氏の公約は急逝した松川正則前市長の取り組みを継承したものだ。松川氏は2018年から返還期日の明確化を政府に求め、22年の市長選でも公約に掲げ再選したものの実現していない。佐喜真氏はハードルが高い公約を盛り込んでいた。
一方、佐喜真氏は従来、政権与党の自民とのパイプを生かした協調路線での基地問題解決を重視してきた。だが選挙期間中、「政府に対して言うべきことは言い、求めるべきことは求める」と強気の姿勢を示した。この発言について選対関係者は「これから佐喜真は政府にも強く言っていく。これまでとは違う」と解説した。
佐喜真氏は当選後、「市民の代わりにしっかりと危険性除去と基地負担軽減を求める。政府とキャッチボールをしながら、この任期の間に少しでも市民が実感できるような結果を残していきたい」と強調した。選挙戦で普天間飛行場の「現実的な返還実現」を訴えただけに、掲げた公約の道筋が示せるか、手腕が試される。
(’24宜野湾市長選取材班)