宜野湾市長選告示を翌日に控えた8月31日夜。立民、共産、社民、社大の推薦を受け、無所属新人の立場で出馬した桃原功氏(65)は市赤道の社会福祉センターで「タウンミーティング」と題された市民との意見交換会に出席していた。集まった市民はわずか数人。「まずいな」。陣営関係者はぽつりと漏らした。
松川正則氏の急逝に伴い、実施された宜野湾市長選挙は超短期決戦となった。自民・公明の支援を受けた佐喜真淳氏(60)は松川氏の前任として2期6年、市長を務め、2018年と22年の知事選にも出馬した。いずれも落選したものの市内では抜群の知名度を誇る。桃原氏の課題はまさに知名度だった。
「顔を売り、人となりを知ってもらう」と陣営の古参幹部らが打ち出したのが全5回の「タウンミーティング」だった。各地域でミニ集会を重ねることで人を呼び、革新票を固めると同時に地域の選挙活動の「スイッチ」を入れる意識付けも図る。従来通り、選挙戦のセオリーにのっとった手法でもあった。
若手を中心とした支援者らの中には「なじみの支援者しか来ない。参加者の顔まで浮かぶ」と集会に招いて支援を呼び掛ける従来の方法に疑問の声も出ていた。だが「地域への意識付けが重要」との判断で押し切られた。
革新地盤である長田を皮切りに新城、真栄原、伊佐、赤道と連日、開催された「タウンミーティング」。描いた青写真とはかけ離れ、参加者は計200人弱。参加者の多くは「見知った顔」だった。短期決戦で時間が限られる中、陣営が練り上げたはずの戦略は上すべりを始めていた。
(’24宜野湾市長選取材班)
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8日投開票の宜野湾市長選は「市政継承」を掲げた佐喜真淳氏が当選した。選挙戦の舞台裏に迫る。