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無党派を意識、最大争点の「普天間」出さず 桃原陣営幹部「運動上すべり」 沖縄<宜野湾市長選2024 市政継承の舞台裏>上の続き


無党派を意識、最大争点の「普天間」出さず 桃原陣営幹部「運動上すべり」 沖縄<宜野湾市長選2024 市政継承の舞台裏>上の続き 告示日に選挙事務所前でライブ演奏する桃原功氏(左)と玉城デニー知事=1日午後、宜野湾市野嵩
この記事を書いた人 Avatar photo 琉球新報社

 宜野湾市長選が告示された1日午後、市野嵩の桃原功氏の選挙事務所前には楽しげな歌声が響いていた。選挙戦の応援に駆け付けた玉城デニー知事と桃原氏によるライブ演奏だ。集まった支持者らはリズムに乗り笑顔で拍手を送っていた。

 約2時間にわたるライブイベントを企画したのは陣営の青年部。選挙戦を通して“映え”を意識し、SNSで“楽しい選挙”を発信・拡散することで支持拡大を狙う「空中戦」に重点を置いた。

 桃原陣営が選挙戦で重視したのは無党派層からの得票だった。6月の県議選で県政与党系候補の3人が獲得した計1万8千票を「基礎票」(陣営幹部)と捉え、それを固めた上で「無党派層への支持拡大を図り、票を上積みする」(同)との戦略を描いた。

 SNS発信に加えて、無党派層への支持拡大の軸としたのは92項目に上る政策だ。「市民が一番、暮らしが一番」を掲げた。これまでの市長選で最大争点だった普天間飛行場移設に伴う名護市辺野古の新基地建設問題については前面に押し出さなかった。

 辺野古移設を普天間の危険性除去のための「唯一の解決策」と繰り返す政府とのパイプを“強み”とする保守市政が続く中で、米軍基地跡地の西普天間住宅地区では琉球大学病院建設が進み、渋滞緩和策として市道11号が開通した。

 市民の目に見える形で地域の発展が進む中、普天間問題を前面に押し出しても「無党派の支持を得られない」(陣営幹部)との判断があった。連日、街頭に立った桃原氏も生活向上を繰り返し訴え続けた。政策を掲げたビラは市内全戸に約20万枚超を配布した。

 古参幹部らによる従来の選挙運動で革新票を固め、若手によるSNSでの空中戦に加え、20万枚のビラで政策を浸透させ、無党派からの得票を狙う。練り上げたはずの戦略だったがふたを開けてみると獲得したのは1万6千票あまり。佐喜真淳氏に約8千票差の大敗を喫した。陣営幹部は「県議選での得票数にも届いていない。上積みどころか革新票も固められず、無党派にも浸透できていなかった。運動が上すべっていた」と力なく語った。

 8日、桃原氏の選挙事務所に駆け付けた県政与党県議の一人は敗戦の報に大きなため息をつき、11月とされる衆院選に向けて「影響は大きい」とつぶやいた。

 (’24宜野湾市長選取材班)