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発がん性など懸念のPFAS、検出相次ぐ 沖縄など米軍基地周辺 住民の血液からも 調査に「地位協定」の壁


発がん性など懸念のPFAS、検出相次ぐ 沖縄など米軍基地周辺 住民の血液からも 調査に「地位協定」の壁 米軍普天間飛行場から漏れ出した泡消火剤=2020年4月(宜野湾市提供)
この記事を書いた人 Avatar photo 共同通信社

 各地の在日米軍基地周辺で、高濃度の有機フッ素化合物(PFAS)が相次いで検出されている。専門家は基地から漏れ出た疑いを指摘するが、日米地位協定の壁が立ちはだかり、自治体による基地内の調査はままならない。発がん性など人体への影響が懸念され、独自に実態解明に乗り出す市民団体もある。

 沖縄県内では、米軍基地周辺の水源や水道水からPFASが相次いで確認されている。2020年4月には、普天間飛行場の外へPFASを含む泡消火剤が14万リットル以上流れ出て、白い泡の塊が住宅地を舞った。

 21年6月にも、うるま市の米陸軍貯油施設で流出。この2件では県の立ち入り調査が認められたが、16年以降に申請した計6件の立ち入りのうち、残り4件は日米地位協定により基地の管理権を持つと定められている米軍が応じていない。

 本州の米軍基地周辺でも検出が相次ぐ。東京都の市民団体は今年3月、青森県の三沢基地周辺の池から、国の暫定目標値を超す濃度を確認したと発表。青森県、三沢市も調査に乗り出し、6月、高濃度の検出結果を公表した。

周辺で高濃度のPFASが検出された主な在日米軍基地

 東京都の横田基地では10~12年、PFASを含む泡消火剤の漏出が3件あったことが昨年7月判明した。米側は「基地外への流出があったとは認識していない」としているが、市民団体の調査で、周辺住民の血液から高濃度のPFASが検出されている。

 神奈川県では22年、横須賀基地の排水から高濃度の値を検出し、厚木基地の米軍格納庫から泡消火薬剤が流出した。神奈川県の担当者は、事故状況などについて米側の情報提供は不十分だとして「原因が分からなければ適切な対策を取れない」と指摘した。


<用語> 有機フッ素化合物(PFAS) 水や油をはじき、食品包装紙やフライパンの塗装など広く使われてきた。航空機用の泡消火剤にも含まれる。環境省によると、発がんや免疫系への関連が報告されているが確定的な知見はない。国内では、代表的なPFOAとPFOSは2021年までに輸入や製造が原則禁止された。国は20年、体重50キロの人が毎日2リットルの水を生涯飲み続けても健康影響が出ない水準として、1リットル当たり50ナノグラムの暫定目標値を設定した。