世界に一つの子ども服 金城さん、在宅療養用にTシャツ工夫


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長男・金城漣君(手前中央)のためにTシャツ作りを始めた母親の裕子さん(右から2人目)と父親の純次さん(手前左)。周囲は支援する医師や相談員ら=12日、南風原町の県立南部医療センター・こども医療センター

 重い病気のため在宅で療養生活を送る金城漣(れん)君(4)=那覇市=の母・裕子さん(37)が、市販のTシャツをアレンジした“世界に一つの子ども服”を作っている。

漣君は日ごろ、鼻に管を当てて酸素を補充している。裕子さんは着脱しやすい服が店頭に少ないと困った経験から服作りに挑戦。Tシャツの前を裁断した後、ボタンを付けて前開きにし、着脱やケアがしやすい工夫をした。綿素材で着心地の良さも特徴だ。
 裕子さんは「同じ悩みを抱えているお母さんたちは多いはずだ。作り方を伝え、困っている人の手助けを少しでもしたい」と夢を描いている。
 作品は漣君にちなんで「Ren T ふろんとおーぷんTシャツ」と名付けた。通院する県立南部医療センター・こども医療センターの医師や相談員からも注目され、宮城雅也医師の働き掛けで10月に院内で展示会を開催。年明けにも開設を予定する、病院ボランティア運営の院内ショップで展示、販売する計画も進んでいる。
 漣君は生まれつき脊椎骨が形成不全の二分脊椎を患い下半身が不自由だった。感情表現が豊かで朗らかだったが2歳のころ、多臓器不全を引き起こし重症化した。意思表示が難しくなり裕子さんは「再び、笑うことができますか」と医師に何度も問い掛け、泣き続けた。「底につくまで落ち込んだ」と当時を振り返る。同じ病気を患う子どもを育てる母親たちに、つらい気持ちを話す中で少しずつ受け入れられるようになった。「生きていてくれただけでもありがたいと言いたい」と裕子さんは漣君を見つめる。
 セール時に市販のTシャツを買い込み、前を裁断した後、両側にアクリルテープを充て、ボタンを縫い付ける。用途に応じてボタン代わりにマジックテープ、ひもを使う工夫も。パーツは100円ショップを利用し低価格で作られるようにしている。漣君の父親・純次さん(27)は「漣がいるからこそ、この発想が生まれた」と目を細める。
 病院ボランティアの真栄城正美さんは「ショップでTシャツに使う小物を売ったり、ボランティアが作ったりして販売する仕組みを整えるなど手助けしたい」と裕子さんの夢を後押ししている。(高江洲洋子)