聞得大君題材に組踊 与那原町文化協会10周年


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全神経を集中させ舞台稽古に臨む出演者ら=11日、与那原町社会福祉センター

 【与那原】設立10周年を迎える与那原町文化協会(座波朝正会長)は、記念事業の目玉として町と縁が深い聞得(きこえ)大君を題材にした創作組踊に取り組み、25日の文化祭で上演する。

 町出身で琉球古典音楽師範の上原武彦さん(81)が8年の歳月をかけ、構想を練り書き上げた「悲恋三津武獄由来記」(一名御殿山)を、人間国宝で県芸大教授の宮城能鳳氏が構成・演出・振り付けする。
 4月ごろから琉舞の家元、師範を含め配役を決め、9月から立ち稽古を開始。11月11日には上原さん、宮城氏、音楽統括の宮城嗣幸さん、座波会長らが見守る中、町社会福祉センターホールで舞台稽古が行われた。
 大君、乳母、侍女、船頭役など13人。三線、琴、笛、胡弓の地謡9人による新作組踊。普通の組踊と違い、せりふと踊りが多く取り入れられ、出演者は最後まで気が抜けない。演出の宮城氏は稽古が終わるごとに指導し、「普通の芝居とは違って、最後まで緊張感を持って演技に当たるように」と注文を付けている。
 物語は、琉球王国の最高神女聞得大君が、首里から侍女ら数十人を引き連れて与那原を経て久高島に参詣。帰途中、台風に遭って遭難、大和の海岸に流れ着いた。占い師によって居場所を突き止めたが、帰国をいったん決意した大君は、助けられた男と恋仲になり身ごもって男と別れがたく悩み苦しむ。憔悴(しょうすい)する大君を勇気付けようと、侍女たちが駆け付け慰め帰国の途に就く場面など、見る者を魅了する。
 作者の上原さんは「自分の作品が10周年記念という節目の舞台で上演されることに涙が出るほどうれしい」と感激。大君役の宮城愛美さん(30)は「歴史に残る人物の役柄だけに緊張するがここまできたら開き直るしかない」と身を引き締めた。
 座波会長は「多くの町民に見てもらい、町文化の財産として大事に継承するよう努めていく」と抱負を述べた。
(知花幸栄通信員)