上江洲さんが大臣賞 全国定通制生活体験発表


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厚生労働大臣賞の賞状を手に笑顔を見せる、上江洲咲希さん(右)と長女の星奈さん=25日、泊高校

 定時制や通信制高校の生徒が学校生活で感じた喜びや苦労を発表する第60回記念全国高校定時制通信制生徒生活体験発表大会が24日、東京都で開かれ、全国の代表58人の中から「小学生の娘と高校生の私」という題で発表した泊高校通信制1年の上江洲咲希さん(27)が最高位の厚生労働大臣賞に選ばれた。

上江洲さんは「大会に出られるだけでもありがたいが、賞に選ばれてとてもうれしい」と喜び、高校生活を支えてくれる長女の星奈さん(8)を抱き寄せた。
 上江洲さんは11年前、高校に通う意義が見いだせず退学したが、星奈さんの存在が高校に再び通うきっかけとなった。視神経萎縮という病名で生まれつき目が見えない星奈さんとさまざまな障がい施設に足を運ぶうちに「障がいのある子どもたちや悩んでいる親の力になれる仕事に就きたい」と思うようになった。児童デイサービスや特別支援学校などの職員になるには専門的な知識や資格が必要なため、目標への第一歩として、高校に再び通うことを決意した。
 家事と仕事、学業を両立させるのは楽ではなく、くじけそうになったときもあったという。そんなとき、勇気づけてくれるのが、母の日に娘がくれた点字の手紙だったという。
 手紙には「お仕事がお休みの月曜日に泊高校に行ってお勉強するママが、私は大好きです。ママ、これからもお勉強頑張ってね」と打たれていた。「手紙を読み、たくさん涙があふれ『弱音なんか吐いていられない。頑張らなくちゃ』と奮い立たされました」と発表した。
 点字などを学ぶ星奈さんの努力する姿から「8歳の娘から人として生きる大切なことを、いつも教えられているような気がする。年齢は違えど同じ生徒同士、娘と励まし合い支えながら共に夢や目標に頑張りたい」という決意を発表の中で表した。
 上江洲さんは「(発表が)同じ境遇の人やこれから定時制や通信制に通うか迷っている人にとって、一歩踏み出すきっかけになっててもらえればと思う。私は今、このまま卒業したくないくらい学校生活が楽しい」と充実した表情を見せ、夫や子どもたちの支えに感謝。星奈さんは「今度、学校で賞状をもらうことがあったら、お母さんにプレゼントしたい」と、上江洲さんに顔を近づけながら、にっこり笑った。(当銘寿夫)