70年経て名誉学士号 ロイ大城さんに


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卒業証書を持ち、喜びをかみしめるロイ大城昇さん=うるま市

 【うるま】太平洋戦争前のカナダで、教師になる夢を抱きながら大学へ入学したロイ大城昇さん(91)=うるま市=は開戦後、「日系人=敵国人」として扱われ強制的に退学させられた苦しい経験を強いられたが、70年の時を経たこのほど、大学が当時の誤りを認め、大城さんを含む排斥した日系人76人に学士号と名誉学士号を授与した。

名誉回復を果たした大城さんは「このようなことは千年に一度しかない」と涙を見せながら喜びをかみしめた。
 「何一つ罪を犯していないのに、大学を追放された」。旧具志川村(現うるま市)出身の両親の下、カナダで生まれた日系2世の大城さんは1941年10月、幼いころからの夢だった教師になるため、カナダ・バンクーバー市のブリティッシュ・コロンビア大(UBC)に入学した。しかし、同年12月、日本軍が真珠湾攻撃を開始し、太平洋戦争が勃発。それを受け、42年3月、カナダ政府は太平洋側に位置するブリティッシュ・コロンビア(BC)州沿岸部に住む2万1千人の日系人に「強制移住」を命じた。大城さんは大学を追放された上、財産も全て没収された。
 一家は内陸部のアルバータ州に移動し、テンサイの農場で働いた。賃金は最低の水準だった。その後、同州最大の都市カルガリーの師範学校に通い、教員資格を取得。教師として働いている間に戦争は終結した。
 以前から関わっていたキリスト教の布教活動に本格的に取り組むため、50年からは神学校に通い、牧師になった。55年に沖縄に渡り、2006年まで両親の故郷、うるま市の教会で宣教師として勤めた。
 大城さんらの名誉回復に動いたのは、在バンクーバーの日系市民団体。米国では、同じように日系学生を排斥した複数の大学が戦後、その日系人に名誉学位を授与した事例がある。市民団体はそれを挙げ、08年からUBCに要請活動を展開、これにUBCが応え、ことし5月30日、特別卒業式が実現した。
 UBCを追放された当時の学生76人のうち、出席できたのは大城さんを含む11人。70年ぶりに名誉学士号を授与された大城さんは「民主主義の国なのに、まるで奴隷のように扱われ、涙が出るほど悔しかった。こういうことはもうあってはならない」と語った。
 また、カナダで生活していたころ、沖縄県系人は、他の日系人からも差別を受けたという。「嫌なことだったが、大きな経験になった」と振り返った。しきりに「千年に一度しかない」と名誉回復を喜ぶ大城さんの目からは涙がこぼれていた。(梅田正覚)

英文へ→Okinawan-Canadian receives honorary degree after 70 years