原油流出、うるま市に通報なし 会社側「危険事案と判断せず」


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 【うるま】うるま市与那城平安座の石油備蓄基地で発生した原油流出事故について、沖縄ターミナル(三溝芳春社長)は事故が発生した7日に、うるま市との公害防止協定で定められている市への通報をしていなかったことが29日、分かった。島袋俊夫うるま市長は「緊急通報体制がうまくいかなかった」と市への連絡が必要だったとの考えを示したのに対し、同社は「通報する危険事案に当たらないと判断した」と説明し、認識の違いを見せた。

 ターミナル社によると、7日午後2時58分に職員が事故タンク排水溝から防油堤内への原油流出を確認。同3時9分にうるま市消防本部へ通報。同29分に平安座自治会に連絡しているが、市側へは直接連絡はしなかった。市消防本部から同43分、市総務課防災係に連絡、公害防止協定を所管する市環境課へは、防災係から午後6時すぎに連絡があった。
 同社は、1976年12月に与那城村(当時)と公害防止協定を締結。2005年にうるま市となった後も、市と同社は協定は有効と認識している。
 また、県石油コンビナート等防災計画では「危険時における緊急通報」は当該自治体に一報が必要だが、「異常現象すべてについて通報」は管轄消防本部のみとされている。
 島袋市長は29日、事故後初めて市役所を訪れた三溝社長に対し「住民の安全を預かる行政への連絡はすぐに行ってほしい。今後、連携を密にし危機管理体制を強化したい」と話した。
 同社は「原油の施設外への流出がなかったため、市への緊急通報が必要な事案と判断しなかった。発生時は、事故タンクの浮き屋根が原油中に沈み、原油が露出した状態だと把握していなかった」と話した。
 県の知事公室防災危機管理課は「異臭や火災の危険性が長期間に及んでいる結果からみると、市へ通報すべきだったと思う。同社の当時の判断が妥当だったか、今後、聞き取りなどで検証したい」と述べた。

島袋俊夫うるま市長(左)に原油流出事故について謝罪する三溝芳春沖縄ターミナル社長=29日、うるま市役所本庁舎
県石油コンビナート等防災計画 異常現象の通報経路図