「聞得大君」厳かに 与那原文化協会10周年記念事業


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観客を魅了した組踊「悲恋三津武嶽由来記」=11月25日、与那原町社会福祉センター

 【与那原】与那原町で町に縁の深い聞得(きこえ)大君を題材にした創作組踊が11月25日、町社会福祉センターホールで行われた文化祭で上演され、多くの町民らを感動させた。町文化協会(座波朝正会長)主催で、設立10周年記念事業として取り組んだ。文化祭は古典音楽斉唱で幕開け。太鼓、琉舞、民謡、日舞などの後、組踊「悲恋三津武嶽由来記(一名御殿山)」を披露した。

 与那原町出身で琉球古典音楽師範の上原武彦氏が構想、人間国宝で県芸大教授の宮城能鳳氏が構成・演出・振り付け、初代文化協会長の宮城嗣幸氏が音楽統括に当たった。
 琉球王国の最高神女聞得大君が侍女数十人を引き連れて久高島を参詣、帰途中に台風で大和に漂着した。
 助けた男と恋仲になり身ごもって、いざ帰国となると別れ難く悩み、夢の中で男と踊る場面や憔悴(しょうすい)する大君を侍女たちが慰めるシーンなど、観客を魅了した。静かに奏でられる三線の音色に吸い込まれ、目を潤ませる人もいた。
 作者の上原氏は「前の晩、興奮してなかなか寝付けなかった。本番では涙がこぼれてしようがなかった」と感激。
 演出の宮城氏は「よなこ浜など、身近な地名を加え、できるだけ分かりやすく現実味のある内容にしたのが良かった。全員が見応えのある演技を見せてくれた」と称賛した。
 最前席で鑑賞した古堅國雄町長は「町の文化と関わりが深い歴史上の人物を取り上げたことに大きな意義がある。行政も地域の歴史文化を生かしたまちづくりを進めていく」と語った。
(知花幸栄通信員)