「マチキフニ」再現 60年ぶり進水祝う 西表祖納


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 【西表島=竹富】竹富町西表島の祖納公民館(那根操館長)が、リュウキュウマツをくりぬいて作るくり舟の「マチキフニ」(松木舟)を約60年ぶりに製作した。

12月22日、同島前泊海岸で完成した2隻のマチキフニの進水式を行い、地域住民が伝統の再現を祝った。
 祖納地区では戦後しばらく、集落間や畑までの往来にくり舟を使っていたが、交通手段の発達で現在は使用していない。
 くり舟の再現を学術的に支援している、沖縄大学地域研究所の板井英伸特別研究員から同公民館に依頼があり、製作を決定。祖納岳から2本のリュウキュウマツを切り出し、11月10日から製作していた。
 若いころにくり舟を作ったことがある地域の長老が指導し、約1カ月かけて2隻を完成させた。作業を行った公民館関係者のほとんどが作り方を知らず、那根館長は「言われた通り作業したけれど、初めのうちは舟になることが想像できないくらい、今の舟とは作り方が違った」と振り返った。
 進水式には多くの地域住民が参加。子どもたちは舟に乗って海岸沿いをこいで進み、完成を喜んだ。製作を指導した前大用安さん(88)は「親が作るのを手伝ったことがあるので、後輩を指導した。昔の通りに作ることができて満足している」と目を細めた。
 完成した舟のうち、1隻は海洋博記念公園海洋文化館で展示する。もう1隻は公民館がしばらく保管し、その後、県指定文化財「新盛家住宅」に飾る予定だ。

完成したマチキフニをこぐ子どもたち=12月22日、西表島前泊海岸
完成したマチキフニの内部。木をくりぬいて作ったため継ぎ目がない=12月22日、西表島前泊海岸