県と国、深まる溝 辺野古埋め立て申請検討


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防衛省、移設へ前のめり/見通しないまま手続き
 政府が2月にも名護市辺野古沖の埋め立て申請を検討していることで、政府の“前のめり”の姿勢が鮮明になった。県は又吉進知事公室長が「県外移設」方針が変わらないことを米政府に示すために再訪米している最中で、政府と沖縄の溝がさらに広がっていることを象徴する。埋め立てへの県内の反発は極めて強く、実現する見通しがないまま、手続きだけが淡々と進められている。

 「振興策だけをやるってわけにはいかない。名護市長選や知事選を待ってという話ではない。申請は一応、出すことになるだろう」。与党幹部は首相訪米前というタイミングでの埋め立て申請の可能性を指摘する。

早期申請主張
 防衛省は早期の申請を主張する。同省幹部は「埋め立て申請自体は、行政手続きの一つだ。作業は淡々と進めていくべきだ」と強調する。政府関係者は、今月8日の小野寺五典防衛相とパネッタ米国防長官との電話会談で、米側が移設問題の進展を求めてきたと指摘。同関係者は「米側は在沖米海兵隊のグアム移転関連費の復活計上を認めた。日本側が何もしないということにはならないだろう」と強調する。
 一方、岸田文雄外相、小野寺防衛相は会見などで「地元との信頼関係の再構築から取り組まないといけない」と述べるなど慎重姿勢を示す。
 外務省幹部は「日本政府が適切にやっていれば米側から口出しされるものではない。昨年、パッケージを切り離したのは、パッケージのままだと米側から『グアム移転のために辺野古移設を早くやれ』という圧力がかかるからだ。日本としてしっかり沖縄と話をしなければならない」と強調する。別の政府関係者は「早急に申請すれば、沖縄との関係構築どころか、かえってこじれる」と話し、申請の時期については明確に決まっていないとする。

“承認”厳しく
 政府が早期に申請するとの予測は県内部にもある。名護市長選を見極めたいとの見方もあるが「国はやると決めたらそんなことは考えない」(県幹部)との声も上がっていた。
 ただ、申請が強行されても県が受け入れられる状況にはないのが現実だ。
 辺野古移設に伴う環境影響評価(アセスメント)は昨年末、補正評価書の縦覧を開始し、手続きは完了した。補正前の知事意見は「環境保全は不可能」と結論付けた。その結論を変える可能性は相当低いというのが庁内の見方だ。
 知事の埋め立て承認の判断はアセスの内容に加え、地元名護市長はもちろん、県内市町村長の意見も影響するとみられる。普天間へのオスプレイ配備で日米両政府に反発が強まる中、米空軍嘉手納基地への配備方針の判明や、歯止めが利かない米兵事件が県民の怒りを増幅させている。「オスプレイ配備に反対する県民大会」実行委員会が今月末に東京要請行動を予定しており、政府の民意無視への反発は一層高まりそうだ。(問山栄恵、内間健友)