又吉知事公室長訪米 普天間進展期待にくぎ


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米政府高官との会談後、記者団の取材に応じる又吉進知事公室長=11日午後(日本時間12日早朝)、米国務省

米日の“主従関係”変わらず

 仲井真弘多県知事のメッセージを携え、又吉進知事公室長が米政府高官に「普天間の県外移設」を直談判した。又吉氏によると、米側は「政権が代わったが沖縄の状況はどうか」と様子をうかがうなど、過去の自公政権時代に名護市辺野古への移設計画を容認していた仲井真県政の“原点回帰”に期待感もにじませた。

これに対し、又吉氏は「自民党政権になったからと言って簡単に(県内移設容認に)戻れるわけはない」と明言。日米首脳会談を控え、普天間問題の進展に期待を寄せる米側にくぎを刺した格好だ。
 普天間問題をめぐる日米両政府の姿勢は硬直化している。又吉氏は沖縄の「県外移設」の声を、ワシントンで対米外交を担う佐々江賢一郎駐米大使にも突き付けたが、佐々江氏は「沖縄の声を直接聞けるのは意義あること」と応じたのみ。日米両政府とも「辺野古移設が唯一の解決策」との認識を共有しており、県内移設か普天間の固定化という二者択一を沖縄に迫る構図のままだ。

■日本軽視

 こうした構図の背景の一つに、米側の日本軽視がある。米政府は2013年以降、軍事力、経済力で台頭する中国を見据え、アジア太平洋地域重視の新国防戦略の下で、同地域の兵力や装備充実を加速化させる方針。あくまで中国を中心に据えた戦略で、日本は同盟国として米側に協力すべきとの立場だ。こうした新たな枠組みの中で、普天間問題は「全体が振り回されるべきでない三次的な問題」(アーミテージ元国務副長官)と米政府内で認識されつつある。
 米国は国防予算削減の圧力にさらされており、米軍の少数精鋭化とともに、同盟国には自国の防衛力強化を求める方向で新戦略を進めており、日本側も自ら進んで日米防衛協力指針(ガイドライン)の見直しに足を踏み入むという“主従関係”は継続している。

■「県民が直接発信」

 オバマ大統領は2期目の国務長官としてケリー上院外交委員長(民主党)、国防長官にヘーゲル元上院議員(共和党)という上院外交委員時代の同僚を指名。両者ともベトナム戦争に従軍経験がありながら、上院でイラク戦争に反対するなど、“穏健派”として知られ、普天間問題を含めた対日政策のかじ取りが注目される。
 日本政府が「移設に向けた手続きは進んでいる」と期待を持たせるような説明をする中、「沖縄県民として直接実情を伝えることが大切だ」(又吉公室長)という姿勢で、米政府内に沖縄の声を届け続けることがより重要になりそうだ。
(松堂秀樹)