再アセスで国、県対立 那覇空港工期短縮に懸案


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那覇空港の第2滑走路増設に関し、県と国土交通省が意見交換した自民党の沖縄振興に関する特別委員会と美ら島議員連盟の合同会議=8日、自民党本部

辺野古と相違 「環境二の次」批判も
 那覇空港第2滑走路増設の本年度事業開始に向け、仲井真弘多知事が求める7年から5年への工期短縮が、財源確保に加え、新たな懸案事項になっている。
 初来県した山本一太沖縄担当相は12日、政府内で働き掛けていく考えを示したが、国土交通省は工期短縮で環境影響評価(アセスメント)をやり直す必要があるとして難色を示し県と対立。防衛省が沖縄側の環境に対する指摘を無視し、強引に進める普天間飛行場移設問題とは逆の構図だ。アセスの専門家らは、滑走路増設と普天間飛行場の名護市辺野古移設がバーターになることに警戒感を強めている。

 「アセスのやり直しは必要でない。評価書の段階で直せばいいのではないか」。8日行われた自民党沖縄振興に関する特別委員会と美ら島議員連盟の合同会議。工期短縮に懸念を示す国土交通省に、ある県の幹部が、こう反論した。

■食い違う言い分
 会議で国交省の田村明比古航空局長は「環境を考えなければ5・5年でできるが、工期短縮で環境負荷は増大する」と指摘。主な課題として(1)夜間作業の発生、複数箇所の同時施行、新たな仮設航路設置のための浚渫(しゅんせつ)が必要(3)ダンプの通行量が1日400台増える―などを上げた。
 さらに「工事内容が根本的に変わり、環境アセスを準備書から出し直す必要が生じる」と説明。最短16カ月かかり、13年度中の着工も不可能とする。総事業費約200億円増も指摘した。それに対し、仲井真知事は「まるで環境省のような発言だが、やりようだ。工夫してほしい」と不快感を示した。
 本年度内の事業開始を目指せば、今月末に予定する予算編成の段階で、各年度ごとの事業費の目安や工期、総事業費の決定が不可欠になる。
 会議終了後、国交省の担当者は「環境への配慮をいいかげんに進めて訴訟を起こされたら大変だ。県は普天間移設では環境への配慮を強く求めていたはずだ」と不満を述べた。一方、県のある幹部は「普天間移設と国の主張は逆だ」と声を荒らげた。

■バーターを懸念
 桜井国俊沖縄大学教授(環境学)は「滑走路の長さや埋め立て面積の著しい変更でなければアセスやり直しは法的に求められない」と説明。その上で「国の言い分はオスプレイ配備を評価書の段階で出し、県民の指摘を無視する姿勢を棚に上げており、極めてご都合主義だ」と批判する。
 だが、その一方で「環境アセス法の趣旨から言えば、今回の件でも方法書の段階からやり直すべきケースだ」と述べ、県の姿勢にもくぎを刺した。
 ある野党の国会議員は「国、県双方とも乱暴だ。目的のために環境は二の次か」と強く批判。2氏ともに「滑走路の工期短縮と辺野古移設がバーターにされないか」と懸念を示した。
 会合後、ある自民党の国会議員は「一日でも早い滑走路増設は必要だ。環境の全責任は県が負うと言えばいい」とため息をついた。自民党の同特別委員会はプロジェクトチーム(PT)を結成。1月中に集中的に会合を持ち、財源確保の具体的方法と工期短縮について政府を交え具体策を講じる方針だ。(宮城久緒)