日米外相会談 米「普天間進展に自信」 埋め立て申請議論か


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 自民党政権が復活して初となる日米外相会談。クリントン米国務長官は米軍普天間飛行場の名護市辺野古移設に向け、2月中旬の首脳会談までの“成果物”を求めるなど露骨な圧力をかけた。退任を控え、長年動かない普天間問題を決着させたい同氏の強い意向があらわになった。

 「そんなことは話してません。仲井真知事としっかり意思疎通を図っていくことを説明した」。帰国前の単独会見で、首脳会談前の埋め立て申請を約束したのかを問われ、岸田外相は表情を硬くして慎重に答えた。クリントン長官との間で埋め立て申請について突っ込んだやりとりがあったとみられるが、同行筋は「その話については控えたい」と言葉を濁した。

■押し売り
 各国の賓客を招いた晩餐(ばんさん)会などで使用する国務省のベンジャミン・フランクリン・ルームで開かれた共同記者会見。「最初に訪問する国について疑問はなかった。日本はアジアにおける米国の関与の礎だ」。国務長官に就任した4年前を振り返り、クリントン氏は“日本重視”を押し売りのようにアピールした。
 さらに続けて「われわれは普天間飛行場の代替施設建設を含む沖縄の米軍再編の進展に自信を持っている」と断言。同行筋によると、会談で同氏は「物事は進んでいくことが大切だ」と述べ、埋め立て申請を含む作業を早期に進めるよう要求した。
 これに対し、岸田氏は「米政府の立場は理解している」と同調するなど、新政権でも揺るぎない日本政府の“対米追従”ぶりを見せた。
 クリントン氏は2月の第3週に安倍首相を迎えて日米首脳会談を開催することを提起した際に「しっかり実のあるものにしよう」と岸田氏に注文を付けており、普天間問題で混乱を招いたと民主党政権を批判して、日米同盟強化を強く打ち出している自民党政権の「本気度」を試す思惑をにじませた。

■深刻な混乱も
 「現在の日米合意に基づいて米軍再編を考えていくという方針について説明した」。ワシントン市内のホテルで記者団の取材に応じた岸田氏は、辺野古移設を推進する考えを示した。だが、県は外相会談の1週間前に又吉進知事公室長を訪米させ、「辺野古は事実上不可能」とのメッセージを伝えている。
 一方、日米両政府は普天間移設を早期に進め、軍事力の拡大で台頭する中国に対抗するため防衛力をさらに強化させる方針。対中国の最前線としてF35や空軍仕様のCV22オスプレイなど最新鋭装備の沖縄配備を検討する動きも加速化している。
 クリントン氏は尖閣諸島をめぐる日中の緊張状態を平和的に収束させるため「挑発するような行動は慎むべきだ」と自制を促したが、普天間移設に関しては県外移設を望む県民世論を無視した挑発的な言動に終始。現行計画を強引に進めれば、日米同盟を足元で支えてきた沖縄社会の一層強い反発を招き、深刻な混乱が生じることになりそうだ。(松堂秀樹)