「寡婦控除」対象外 非婚世帯に不利益


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 夫と死別か離婚した母子世帯に適用される、所得税法上の「寡婦控除」について、日本弁護士連合会(日弁連)は、結婚していない非婚の母子世帯に控除が適用されないのは憲法違反だとし、総務省や沖縄県、那覇市などに適用を求める要望書をこのほど出した。非婚の母子世帯は、同じ離婚や死別の母子世帯に比べ、税金面や保育料の算定などさまざまな面で不利益を受けている。

 給与収入が約200万円で5歳の子を育てている非婚の女性は、寡婦控除が適用されず、住民税は年額6万3100円、所得税は2万8300円支払っている。もし公立・認可保育園に通わせていれば、保育料が年23万円余かかる。
 同じ給与所得の離婚や死別の母子世帯であれば、非課税世帯となり、住民税、保育料は無料、所得税は年1万円余になる。税金だけをみても、離婚・死別の母子世帯より非婚の場合約9倍多く支払っていることが試算で分かった(表参照)。
 また、今回日弁連に人権救済を申し立てた女性(48)=那覇市=は、入居していた県営住宅の家賃が、適正に申請をした上で、当初寡婦控除が適用されていたが、入居後6年以上たって、控除が適用外になるという通知を受け取り、家賃が前年の倍以上に増額した。そのため退去せざるを得ない状況となった。
 寡婦控除は、保育料や公営住宅の家賃にとどまらず、国民健康保険税なども高くなり、就学援助の算定にも影響を及ぼす。
 寡婦控除の適用の有無は、婚姻歴で分かれる。例えば「非婚で子どもを産んだ後に、子の父とは別の男性と婚姻届を出し、離婚した母子世帯」や「離婚後に別の男性の子どもを非婚で産んだ母子世帯」には適用されるのに対し、一度も婚姻歴のない非婚の母子世帯には適用されない。
 しんぐるまざあず・ふぉーらむ沖縄代表の秋吉晴子さんは「婚姻歴で差別されるというのは、女性全体の人権に関わる問題で、一部の人の話ではない」と話す。
 子どもを養育する戦争未亡人に配慮して1951年に制度化された「寡婦控除」は、死別や離婚した母子世帯に適用され、27万円(特定の寡婦は35万円)の所得控除が受けられる。しかし非婚の母子世帯の適用は見送られたままだ。
 一方、自治体独自の判断で、公立・認可保育園の保育料について、非婚の母子世帯であっても、寡婦控除を適用し保育料を減免する「見なし適用」が広がりつつある。
 2011年に宜野湾市、12年から那覇市、沖縄市、北谷町、うるま市、糸満市でも適用している。ただし自己申告のため、知らない人は多く支払っている可能性がある。
 県母子寡婦福祉連合会会長の与那嶺清子さんは「最終的には法改正が必要だが、運用基準の見直しで、県も市町村も『みなし適用』で対応してほしい」と要望している。