故仲本さん琉歌 掛け軸に 普及実行委、八重瀬町に寄贈


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仲本稔さんの琉歌や詩を記した掛け軸を比屋根方次町長(右)へ贈呈する薫さん(左端)、玉栄茂秀さん=18日、八重瀬町役場

 【八重瀬】沖縄の代表的民謡の一つ「汗水節(あしみじぶし)」の普及を図る「汗水節の心」普及啓発実行委員会(玉栄茂秀委員長)は、同民謡作詞者の故仲本稔さん=旧具志頭村仲座出身=が日記や手帳に残した琉歌や詩などをこのほど5点の掛け軸にし、18日、八重瀬町立歴史民族資料館へ寄贈した。

玉栄委員長は「仲本さんが残した琉歌や詩の中から、哲学性がある作品を選んだ。歴史の研究や文化振興に利用してほしい」と話した。
 仲本さんは、1904年生まれ。戦前、戦後を通じて郵便局長として勤めた。25歳のころ、県の民謡選に応募した「勤倹力行の奨(すすめ)」が入選を果たした。この歌詞を宮良長包が作曲、改題し「汗水節」となった。歌詞は、働く喜びや社会奉仕の精神を説く内容となっている。
 5点の掛け軸は書道家の上地龍洞さんがしたためた。古里の自然に対する情景を詠んだ琉歌や、辞世の句などが選ばれている。その中の一つ、仲本さん自らが造語した座右の銘「流汗化玉(りゅうかんかぎょく)」は、「流す汗は立派な宝石のような価値のあるものに変化する」という意味で、「自らの歌詞を実践する仲本さんならでは」(玉栄委員長)と評価されている。
 仲本さんの長男薫さん(67)によると、沖縄が貧しかった昭和初期に生まれた仲本さんは、厳しい環境の中でも自らが考える理想の生き方を「汗水節」に込めたという。
 寄贈された掛け軸の中には「汗水節」のフレーズも書かれており、仲本さんの“人生哲学”が詰まっているという。薫さんは「(汗水節は)仲本家の財産として、長く町民の心に生きてほしい」と願っている。
 寄贈を受けた、同町の比屋根方次町長は、感謝の意を示し「今後、完成する役場新庁舎の玄関に掲示したい」と答えた。