「皆で作る字誌」完結 うるま市具志川


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 【うるま】うるま市具志川区の「具志川字誌」編集委員会はこのほど、字誌下巻と資料編を発刊し、15年にわたる編集作業に区切りをつけた。

字誌は全4巻で総ページ数は1800ページ。歴史、文化、自然、民俗など幅広い分野で具志川区の姿を丹念に記述。移民や沖縄戦、「集団自決」(強制集団死)に関する証言や記録も収録。近現代史を生き抜いた区民の姿を描き出した。
 23日、具志川公民館(高江洲朝美館長)で出版祝賀会を開催。編集委員を表彰し、功績をたたえた。編集委員長の比嘉正純さん(88)は「執筆者選定などで苦労し、15年をかけたが、こうして完成することができ何とも言えない気持ちだ。戦争中の出来事や移民の記述で特徴ある字誌ができたと思う」と語った。
 「具志川字誌」は本編上・下巻、写真集、資料編の構成。字誌編集作業は1997年に開始し、2011年4月に写真集「拓けゆく ぐひちゃー」、12年11月に本編上巻、今年2月に下巻、今月になり資料編を発刊した。
 具志川区の歩みの中でも特徴的なハワイや南米、南洋群島への移民については「具志川市史」などを参照し、多くのページを割くとともに資料編で移住者の証言や名簿を収録した。戦争に関する記録では、13人の若者が亡くなった「集団自決」の悲劇や戦争体験者の証言を収録した。
 外部の専門家に編集作業を委ねるのではなく「本作りは素人ながらもみんなで作る字誌」(上巻まえがき)を基本理念に掲げ、区民を中心に粘り強い編集作業を重ねた。執筆者は80人、証言や座談会出席などの形で協力した区民は300人余に上るという。
 祝賀会には島袋俊夫うるま市長らが出席し、4分冊にわたる字誌の刊行を祝った。会場には戦後初期の具志川区の姿を収めた写真が展示され、出席者はかつての具志川の姿を懐かしんだ。
 「具志川字誌」は各巻とも1500冊発刊。区民に無償配布するほか、市内図書館に寄贈される。

15年の編集作業を経て発刊された「具志川字誌」の全4巻
大著をまとめた編集委員に感謝状が贈られた