嘉手納の民話一冊に 309話収録、副読本も製作へ


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民話集の完成を當山宏嘉手納町長に報告する編集委員ら=3月29日、嘉手納町役場

 【嘉手納】嘉手納町教育委員会はこのほど、町に伝わる民話を収めた町初の民話集「かでなの民話」を発刊した。沖縄に甘藷を伝えた町の偉人「野國總管」や、町屋良にある池「屋良ムルチ」にまつわる話など309話を収録する。編集委員会の津波古米子委員長は「先人たちの思いを後輩に受け継ぎ、嘉手納の文化の礎になってほしい」と喜んだ。

 同地域の民話は1993年ごろ、沖国大の故・遠藤庄治名誉教授の研究グループが町内のお年寄り113人から1089話を聞き取り、論文にまとめている。編集委は5年間かけて、聞き取り時に録音した音声を聞き直して選抜、編集した。
 同じテーマでも話者を変えて複数収録しており、語り口や内容の違いを楽しめる。また、屋良ムルチに住むとされる大蛇を退治するために、包丁を縦に並べて置いた「屋良ムルチの蛇退治」など、他地域にはない話もあるという。
 町教委は今後、この民話集を基に、子ども向けの副読本を製作する方針だ。當山宏町長は「町は米軍基地に土地を接収されたため文化財がほとんどなく、人々の記憶の中に残っている。今後、いろいろなものに発展できる」と感謝した。
 民話集はB5判で490ページ。500部作成、嘉手納町立図書館で購入できる。1冊千円。問い合わせは町立図書館(電話)098(957)2470。