【島人の目】島がはぐくむ熱い思い


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 冬の寒さが厳しさを増してきたある夜、私たちは沖縄からロサンゼルスに住む娘を訪ねてきたご両親を歓迎するホームパーティーを開いた。
 集まったメンバーの顔ぶれもさまざま。職業や経歴は違うが、みなそれぞれ自分の持ち場で頑張っている者ばかりだ。
 にぎやかな笑い声が響き渡るなか、友人の母がふとつぶやいた。「人生ってバスに乗るようなもの。しっかり前を見て座る人もいれば、後ろ向きに座ってぼんやりと外を眺めているだけの人もいる。どういう人生を選ぶかは自分次第。だけど親は子の幸せをいつも案じてしまう。娘が遠くにいるのをつらく思う時もあるけど、こんなにたくさんの良い友達に巡り合えて娘は幸せ」
 国と国とを隔てる境はどんどん低くなってきているが、親兄弟と遠く離れて暮らすのはやはり寂しい。しかし、そうした寂しさが粘りへと変化する時もある。異国に住む私たちにとって、沖縄とは単に懐かしく思う郷愁の対象だけではない。たとえ雨が降り続いていたとしても、太陽はいつか必ず顔を出すのだから、と励ましてくれる存在だ。そういう支えがあるからこそ、苦境を乗り越え、外国でたくましく根を張る沖縄人はたくさんいるのだし、島がはぐくんだ熱い思いはお互いの絆(きずな)をも強くする。
 人間として成長していく上で試練は必要。そして試練を克服した人の魂には強い精神力が宿る。誰にとっても人生は一度だけ。取り返しのつかない一瞬一瞬の連続が人生というものなのだ。
 さあ、今年も新しい年が幕を開けた。しっかり前を見て進んでいこうではないか。(平安名純代、米国通信員)