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『未来に伝える沖縄戦(1)』 証言こそが力になる


この記事を書いた人 Avatar photo 琉球新報社
『未来に伝える沖縄戦(1)』琉球新報社会部編 琉球新報社・980円

ありがたい本ができた。冊子のように手軽だが、中身が重く貴重な記録ばかりだ。2011年9月から琉球新報で始まった「未来に伝える沖縄戦」の連載をまとめたものだ。続編がさらに加わる予定だという。

6月は学校や地域で「戦争と平和・命」に向かい合う企画が盛りだくさんだ。「平和学習」という学びの場や形は、「戦争体験」の記録や継承の在り方を含め、これまでさまざまに試行錯誤されて来たはずだ。戦争体験者が少なくなる、直接話を聞く世代を増やさなければ、と焦るような気持ちでもなかなか実現できなかったことが、この企画で中高生たちは得がたい体験を手に入れることになると思う。
沖縄戦の「勉強」をしようとする子どもたちに聞いてみた。口をそろえて、沖縄戦を知る、考える平和学習は、「暗い、悲しい。でも大事だと思うから」と。なぜ証言を直接聞いたり、戦争の歴史を学習することが大切だと思っているのか。それは戦争の実態を知ることが、単に歴史を学ぶことだけではなく、まぎれもなく普遍性を持って「生きること」や「命」を考えることになるからだ。そして自分が生活する社会や世界の動きに連動させていけるからだと思っている。
この本に収められた証言者たちの体験が、生の声と表情を記録したばかりではなく、取材した中高生たちの受け止め方、感じ方、自分たちの役割の自覚も含め、そのまま生き生きと記録することになった。メモ書きされた語句の説明、適切な記録写真や地図なども生かされている。沖縄戦の体験を無駄にせず、継承する未来の頼もしい担い手たちが育ってきた。
この連載のおかげで、南風原文化センターでは、同じように平和学習をしようとする小中高生たちの座談会を開催することができ、今後の課題も少しずつ見えてきたように思う。戦争体験の継承は、「戦争は二度としてはいけない」というだけでは説得力がない。より具体的な証言こそが、力になる。そのことを若い世代が感じ始めている。 (平良次子・南風原文化センター学芸員)