苦難越え長寿の笑顔 伊礼信儀さん、カジマヤー祝う


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カジマヤーで住民から祝福される伊礼信儀さん(中央)=19日、沖縄市上地

 【沖縄】生まれも育ちも沖縄市上地の伊礼信儀さんのカジマヤー祝いが19日、市上地で開かれた。「こんなに多くの人に祝ってもらいありがたい」。足腰丈夫、口巧者な伊礼さんは、今も自宅近くの農園で野菜づくりに汗を流す。

97年を振り返り「こんなに街が発展するとは夢にも思わなかった」と話し、家族に囲まれ、晴れの日を共に喜んだ。
 伊礼さんは戦前、サイパンに渡り、農業や百貨店、郵便局勤務とさまざまな職を体験した。戦後はサイパンから強制送還された。故郷に戻った時の街の風景が忘れられない。「人もいなくて何もなかった。食べ物ですらない。本当に悲しかった」と述懐する。
 人生を振り返ってつらかったことは、戦争中のサイパンで「逃げ惑って、どこにいるのかも分からなかった時」という。
 戦後は、トラック運転手や風呂屋の経営などに携わって一家を支えた。故郷は軍用地から解放され、区画整理が始まって自治体が発足したころから、生活に落ち着きが出てきたという。
 この日は、中の町青年会がエイサーの舞と太鼓でカジマヤー祝いを盛り上げた。オープンカー・パレードでは、集落の4カ所で停車、祝福の掛け声に笑顔で応え、住民が長寿にあやかっていた。