米ジュゴン訴訟 来月12日審理再開 半年内に判決


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名護市東海岸を泳ぐジュゴン=2008年7月4日午後、名護市嘉陽沖合

 名護市辺野古海域の絶滅危惧種ジュゴンの保全や、普天間飛行場代替基地建設差し止めをめぐって争われる米ジュゴン訴訟の公開審理が12月12日(現地時間11日)、サンフランシスコ連邦地裁で開かれる。

沖縄のジュゴンを米国の国家歴史保存法(NHPA)適用対象と認め、国防総省のNHPA違反を指摘して事実上の原告勝訴となった2008年1月の“中間判決”を前に開かれた07年9月以来、公開審理は7年3カ月ぶり。通常なら早くて2~3カ月、遅くとも半年以内には判決が下る見込みだ。
 原告は沖縄防衛局の環境影響評価(アセスメント)検証や歴史・文化的調査などから「(埋め立てによる)ジュゴンへの影響はない」と報告書で結論付けた国防総省のNHPA違反を追及する構えだ。一方、被告側は米国憲法で定められる国家の外交や国防問題には司法が介入できないという「ポリティカル・クエスチョン・ドクトリン」(政治的問題の法理)を全面に、本件が命令に沿って手続きを終えた問題であり、NHPAレベルを超えているという主張をすると予想される。
 同裁判は03年に提訴され、08年の“中間判決”により、同省にジュゴン保全指針提出を求めて一時中断していた。14年4月、国防総省が「ジュゴンへの影響はない」と結論する報告書を連邦地裁に提出した。これに対し原告側は8月、新基地建設差し止め追加申し立てを行い、あらためてNHPA違反を訴えていた。国防総省は9月に「政治的問題の法理」を理由に差し止め請求却下を申し立てた。この間、原告と被告は書面で議論を闘わせてきた。
 原告はこれまで、国防総省に求めていたジュゴンの利害関係者との協議が行われていないことなどから、NHPA違反を指摘した。ことし5月から7月にかけ、市民らの調査によりキャンプ・シュワブ沿岸の海草藻場で118本のジュゴンの食(は)み跡が見つかったことも勘案されていないと問題視していた。
 公開審理には原告側から米国内の同訴訟代理人サラ・バート弁護士が出廷予定。原告の真喜志好一氏と訴訟支援者の吉川秀樹氏、日本環境法律家連盟の弁護士らが訪米し、傍聴する。(石井恭子)