「福島、沖縄は捨て石」 衆院選で県内避難被災女性


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福島から避難した女性。子どもたちが通っていた学校の除染作業を撮影した写真を示した=3日、那覇市おもろまち

 「捨て石」。その言葉を福島県出身の女性(47)は2012年3月、初めて訪れた沖縄で知った。11年3月の東京電力福島第1原発事故後、避難した那覇市での暮らしは3年目。故郷の復興は見通しがつかない。沖縄県民として前回の衆院選、11月の県知事選でも投票した。沖縄で2度目の衆院選投票を控え、「捨て石」という言葉が福島にも当てはまると痛感する。

 11年3月11日の東日本大震災発生時、郡山市に暮らしていた。家族は清掃業を営む夫(51)、中学生だった長男と長女の4人。
 「無党派というよりも政治に無関心」。福島で投票を欠かさなかったが、候補者を選ぶ基準は政治理念や公約よりも、見た目や印象の良さが優先した。
 震災後、自宅は一部損壊した。亡くなった身内はいなかったが放射線におびえた。子どもが通う中学校の土壌は除染作業で取り除かれたが、不安は蓄積した。
 子どもが安心して教育を受けられる場所を行政に求め、「ふくしま集団疎開裁判」の原告団に加わった。福島地裁郡山支部に仮処分申請したが、11年11月に申し立ては却下された。その1カ月後、義母が突然亡くなった。「義母に避難しろと言われた気がした」。福島から離れた沖縄への避難を決めた。沖縄県によると、東日本大震災の県内避難者数は11月1日現在、840人。最多は福島出身者の588人で7割に及ぶ。
 夫は清掃の仕事を沖縄でも続け、不慣れな土地で取引先を開拓するため奔走する。女性もその仕事を手伝い、何とかやりくりできている。子どもたちは高校生になった。
 約70年前の戦争で日本本土を守るため、捨て石にされた沖縄は戦場になった。「今も政府は基地を押し付けている」。無関心で済まされない現実を目の当たりにし、次第に政治への関心を抱くようになった。
 「汚染土壌は結局、福島に建設予定の中間貯蔵施設への保管が決まった。沖縄では名護市辺野古に新基地建設が強行されている。福島も沖縄も捨て石だ」
 原発、基地をめぐる問題にはいずれも命が関わる。女性は避難者や基地に苦しむ国民がアベノミクスや消費税増税の議論の影に隠れていると感じる。景気回復の実感もない。基地問題の公約を重視して今回投票するつもりだ。
 衆院選中の10日、特定秘密保護法が施行される。国民の命に関わる情報に「秘密」の網がかけられないかと懸念する。「多くの国民が声を上げると、権力者は自分勝手に動きにくい。だから政治への関心が高まらないように、権力者が仕向けていると勘繰ってしまう。私たち有権者が関心を持ち、1票を投じることは大切だ」(島袋貞治)