辺野古移設 国の監視委内部で疑義 環境対策に異論


この記事を書いた人 Avatar photo 琉球新報社

 名護市辺野古への米軍普天間代替基地建設に向け、事業に伴う環境保全策を検討するため沖縄防衛局が設置した環境監視等検討委員会(委員長・中村由行横浜国立大大学院教授)をめぐり、委員自らが監視委の客観性確保や環境影響判断の難しさに疑問を呈し、第三者機関設置を求めていたことが、28日までに関係者への取材で分かった。監視委の途中経過の協議の中で第三者委設置が求められていたもので、監視委の役割について内部からも疑義が出された格好だ。

 一方、昨年の台風19号の影響で、海底ボーリング(掘削)調査海域を囲む浮具(フロート)を海底に係留していた重量160キロの鋼板アンカーなど248個のうち120個がなくなっていた。また、埋め立て区域内にある大型ハマサンゴ群体一つが損傷し、辺野古の海草藻場で最大で長さ265メートルなど36本のアンカー移動の痕跡が見つかっていた。変更申請の美謝川切り替えでは環境負荷の大きい案が選ばれていた。
 監視委は2013年末、公有水面埋め立て申請書を承認した仲井真弘多前知事が事業に伴う環境保全策を検討する機関を求め、防衛局が設置した。14年度から非公開で3回開かれたが、協議内容はほとんど不明だ。工事中や米軍施設供用後の環境把握のため、防衛局が進める事後調査計画策定や調査実施後の評価、環境影響の総合評価までの指導・助言が監視委に一任されている。第三者機関設置を求めた委員からは「(計画の)審査側と評価側が同じなのは問題」「工事の影響判断は第三者的な専門家が行うスタイルが必要だ」などと、客観性や科学性が疑問視されていた。
 米軍キャンプ・シュワブを流れる美謝川切り替えでは、防衛局が14年9月に県に提出した変更申請で採用された暗渠(あんきょ)(地下水路)1022メートル、工期17カ月の案(その後取り下げ)よりも、地下水路が短く環境負荷が少ない案(暗渠730メートル、工期24カ月)が検討されていた。しかし同案は既存の建物にかかる陸上工事部分が多く「施工性に劣る」として選ばれていない。
 14年8月の海底掘削調査開始に伴って実施したヘリによるジュゴン生息域監視調査など(11日間)では9月1日に大浦湾で1頭を発見、大浦湾に隣接する名護市嘉陽沿岸で延べ11頭、本島西海岸の古宇利島海域でも延べ11頭を発見した。
(石井恭子、清水柚里)
英文へ→Doubt cast on committee by Defense Bureau for environmental protection of Henoko relocation