農相が県指示の効力停止 知事、公平性を疑問視


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 林芳正農相は30日、米軍普天間飛行場の辺野古移設計画をめぐり、翁長雄志知事が沖縄防衛局に出した海底作業の停止指示の効力を一時的に停止すると決定した。作業を停止すれば「日米関係への悪影響など外交・防衛上の損害が生じる」とした防衛局の主張を全面的に認めた形。

一方、翁長知事は「国が申し立てをし、同じ国が審査するという対応は、審査が公平公正に行われたのか理解できず、残念だ」と指摘した。知事は同日、新たな対抗措置に関し「専門家と相談している」と明言。防衛局への岩礁破砕許可の取り消しなどの判断時期が焦点となる。
 農相の決定は、防衛局が行政不服審査法に基づき出した審査請求に対する裁決が出るまでの間、知事の作業停止指示の効力を停止することになるが、翁長知事は同日、記者団に対し、移設阻止の取り組みを進める考えをあらためて示した。
 林農相は決定に関し記者団に「県からも意見があったが(防衛局の申立書と)両者を勘案して判断をした」と説明。知事の指示の取り消しを求め提出された不服審査請求には「法律上裁決の期限の定めがない。期限を定めるのではなく、内容を十分に検討し、法令に基づいて適切に対応したい」などと述べた。
 同日午前、水産庁の職員が沖縄防衛局と県庁を訪れ、知事の作業停止指示の執行停止決定書を提出した。決定書は法的な解釈として、知事の作業停止指示は海底面の現状変更を全て停止することを義務付けていることから「行政処分」と位置付けた。
 農相は県の弁明を受けた上で、4月23日以降に防衛局側からの反論を聞き、不服審査請求についても判断する。
 岩礁破砕許可をめぐって農相は、県に許可を得ていることから、国が事業者である場合も「私人が事業者である場合と変わりはない」として防衛局の申し立ては「適法」としている。さらに作業停止指示の効力を停止しても「公共の福祉に重大な影響を及ぼすとはいえない」と説明した。
 翁長知事は30日、「県民に寄り添いながら、腹を据えてこれから対応していきたい」と述べ、岩礁破砕の許可取り消しなどに向け調整する考えを示した。
英文へ→Japan suspended Okinawa’s order to halt Henoko reclamation work: Governor Onaga doubts its validity

辺野古沿岸部での作業停止指示の効力停止を発表する林農相=30日午前、国会
農相決定について「公平公正に行われたのか」と批判する翁長雄志知事=30日午後、県庁