沖大ゼミ「沖縄の業界地図」発刊 800社以上を網羅


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県内800社以上を網羅した「沖縄の業界地図」を発刊した沖縄大学法経学科の学生たち=8日、那覇市の沖縄大学

 沖縄大学の法経学科の学生が中心となり、県内で活動する企業800社以上を収録した「沖縄の業界地図」(沖縄教販、税別880円)を作成した。4日から県内の書店やコンビニで販売を始めた。

上場企業が集中する大都市圏や業界大手に関する「業界地図」はあるものの、中小企業が多い沖縄の業界や企業間の関係を一望できる資料はほとんどなかった。企業人だけでなく就職活動に臨む学生にも需要がありそうだ。
 A4判、カラー刷りで108ページ。「ものづくり」「金融・インフラ」「交通」「観光」「医療・人材」「卸売り・小売り」の章立てで、各業界の企業相関図を掘り下げている。関連統計など経済分析のためのデータをふんだんに盛り込み、企業の相関を一覧できる見やすいデザインも特徴だ。百貨店業界で沖縄三越閉店後の動向を盛り込むなど、最新情報を反映させている。
 法経学科の大城淳准教授(経済学)、豊川明佳(さやか)講師(経営学)が指導する四つのゼミが総掛かりで、2014年4月から1年かけて取り組んできた。約70人の学生が分野ごとに6グループに分かれ、各業界の特色や企業の活動内容について調査を進めた。
 企業ホームページや決算報告、業界団体の資料といった公開情報をはじめマスコミ報道や信用調査会社の統計などから企業情報を収集。学生には3週間ごとに調査状況のプレゼンテーションを課すなど、一般発売を想定して精度と品質、情報量にこだわった。
 病院業界を担当した百瀬優也さん(3年)は「沖縄の企業や互いのつながりが分かって面白かったが、思っていた以上に情報が出ていなくて苦労した」と振り返り、情報通信業界を担当した前城航太さん(同)は「県内企業は資本金の規模が小さく、県外大手の参入で環境は厳しいかもしれない。それでもIT津梁パークなど県も力を入れている成長分野だ」と話した。
 本年度も調査研究を継続し、仲西義隆さん(3年)は「製本までに調査が間に合わず盛り込めなかった企業も多くある。バージョンアップさせていきたい」と意気込みを語った。
 「沖縄の業界地図」の作成という研究テーマを学生に与えた背景について大城准教授は「アイデアを形にしていくことが経済を動かす原動力になる。こういう物があったらいいなという発想を妄想で終わらせないイノベーションの体験を、沖縄経済を担う若者に与えたかった」と話した。