歌人・道浦母都子さんに聞く 辺野古座り込みに参加して


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歌人の道浦母都子さん

 歌人の道浦母都子さんがこのほど来県し、23日に名護市辺野古キャンプ・シュワブのゲート前での座り込みに参加した。感じたことなどを聞いた。
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 ゲート前で短いあいさつをさせていただいたので、即興で一首詠みました。
〈月桃の花咲く島に軍用トラックふさわしくないヘリ基地反対〉
たまたま軍用トラックが通ったので、そのまま詠みました。美しい花の咲くこの島に基地は似合わない。辺野古基金の申込書をたくさんもらってきました。直接行って座り込みはできなくても、辺野古基金への協力ならできます。友人たちに郵送します。
 「沖縄を返せ」「沖縄奪還」と言っていた時代に学生時代を過ごしました。返還後は、行くのがおこがましいという思いがあり、なかなか足が向きませんでした。ある時、行かないと分からないことがあると考え、二十数年前から沖縄に通うようになりました。沖縄の自然、空気、人情、人の温かさ、いろんなものが好きになりました。
 沖縄は今も戦時下を引きずっています。日本は沖縄に全部負荷を押し付け、自らの平安を保っています。辺野古の問題も、美しい海に基地を造るという普通では考えられないことをやっています。安倍首相が翁長知事に会おうとしなかったことも、恥ずかしいし、ものすごく失礼なこと。そういう首相の下に私たちは生きているのだと感じました。
 17日の県民大会は、その日に「大阪都構想」の住民投票があって、県民大会のことは、本土ではあまり報道されませんでした。今のジャーナリズムの姿勢がここに示されています。短歌の世界でも全国的には沖縄の問題への関心は薄いですね。日本人はいつからか、自分の生活がよければいいという傾向になってしまいました。
 大阪に帰ったら辺野古の歌を作ります。福島の歌もずっと作っています。その場その場で生きながら命を脅かすものに対峙(たいじ)している人は、それを歌にしてほしいと思います。
(聞き手・米倉外昭)
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 みちうら・もとこ 1947年和歌山市生まれ。大阪府在住。学生運動の挫折や愛を詠んだ歌集「無援の抒情」が反響を呼ぶ。歌集、エッセー集を数多く出版。昨年、2作目の小説「光の河」を出した。