新生物調査せず着工 防衛局方針に市民反発 辺野古


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国内で初めて大浦湾で発見されたニシヒラトゲコブシ(ダイビングチームすなっくスナフキン提供)

 米軍普天間飛行場の名護市辺野古移設計画で沖縄防衛局が、環境影響評価の後に埋め立て予定周辺海域での生息が研究者などから報告された新種を含む生物について、追加の現地調査は行わずに埋め立て工事に着手するとの基本方針を示していることが分かった。

防衛局側は「調査によるかく乱が環境に影響を及ぼす」などと説明しているが、自然環境団体などは「調査は不可欠であり、理解に苦しむ」と批判している。
 沖縄防衛局は、5日に行った移設計画に関する環境監視等委員会で方針を記載した資料を配布。調査を行わない理由として(1)限られた情報の中で当該種を発見することは極めて困難(2)種によってはこれまでと別の採取方法が必要―なども挙げた。一方、文献収集や発見者らへの聞き取りで、新たに判明した生物の生息状況などを確認するとした。
 だが那覇空港滑走路増設や中城湾港泡瀬地区の埋め立てなどでは、新しく報告された生物の現地調査が行われており、沖縄防衛局の方針との違いが問われそうだ。
 埋め立て予定地の大浦湾で2011年に確認されたカニの一種ニシヒラトゲコブシの国内初発見に関わったダイビングチーム「すなっくスナフキン」の西平伸代表(57)=名護市瀬嵩=は「調査しないのは理解に苦しむ」と沖縄防衛局の方針に憤る。
 大浦湾の環境保全を求める要望書をまとめた日本ベントス学会の佐藤正典鹿児島大大学院教授は「多様性豊かな大浦湾の環境は掛け替えのないものだ」と調査の必要性を強調した。
 日本自然保護協会の安部真理子主任は「埋め立ての方が大きなかく乱だ」と話している。