自立へ地域手作り 大浦湾周辺住民、基地賛否超え連携


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遊歩道の整備予定地に立ち、振興計画を説明する新名善治区長=名護市汀間

 【名護】政府が米軍普天間飛行場の移設を計画する大浦湾に面した地域で、地元主導の地域おこしが始まっている。中でも名護市汀間区は新基地受け入れと引き替えにもみえる振興策に頼らず、自立した地域づくりを目指している。新名(にいな)善治区長(61)は「自力で地域を振興することで、区民が基地に対し賛否を堂々と語ることができる」と語った。

 125世帯267人の汀間区は住民の高齢化や過疎の課題を抱える。一方、基地建設が進めば騒音被害を受ける可能性は高いが、辺野古、久志、豊原の3区と違い、政府と補償を話し合う場は設けられていない。
 汀間区は2014年4月の総会で、振興と過疎対策の長短期計画を決めた。子どものエイサー隊発足や区の特産品開発など、伝統を継ぎながら地域を発展させる取り組みを盛り込んだ。
 現在進めている事業は、汀間川沿いの遊歩道整備だ。約890メートルで乳母車でも通れる遊歩道を目指す。近くに子ども連れが安心して遊べる「幼児専用ビーチ」も設けたいと考えている。
 重機を使う工程も含めて区民だけで全てこなすことで、業者に頼んだ場合の約2割に費用を抑えた。市が独自の地域おこしを支援する「ちばる地域提案事業」にも選ばれ、満額の100万円の助成を受けた。仕事の合間を縫い作業する勢頭政治さん(51)=自営業=は「区民全員で完成させ、小さな村の大きな財産にしたい」と期待を込めた。新名区長は「振興は内側から取り組まなければ一過性に終わる」と強調する。
 区を超えて地域おこしに取り組む動きもある。13年に東海岸の二見以北10区の住民らが始めた「フラワーフェスティバル」は恒例行事となった。旧久志村の13区の区長や住民でつくる「市東海岸久志地域交流推進協議会」は修学旅行生や海外から旅行者を受け入れ、民家での宿泊を推進する。
 基地建設について条件付き容認の区も反対の区も意見の違いを超え、振興に取り組んでいる。同協議会はことし5月、名護市大浦のわんさか大浦パーク内に事務所を開設し、活動を本格化させた。
 島袋正敏会長(71)は「地域を元気にするためにみんなで頑張るという空気ができつつある。自分たちの地域の将来は自分たちで決めることと自立することが大事だ」と語った。(明真南斗)