地域に惜しまれ閉店 楚辺「味処くいしん坊」


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地域に惜しまれつつ店を閉店した山城さん夫妻と家族たち=7月31日、読谷村楚辺

 【読谷】1985年に開業し30年間、地域に親しまれてきた読谷村楚辺の食堂「味処くいしん坊」が7月31日で閉店した。最後の営業日となった31日には常連客のほか、多くの地域の人々が訪れ、店主の山城義治さん(65)、初美さん(65)夫妻にねぎらいの声を掛けた。

義治さんは「体力の限界だったが、続けられたのはみんなのおかげ。感謝が尽きない」と目に涙を浮かべながら謝意を述べた。
 最後の営業には長女のみさきさん(38)、次女の千春さん(36)、三女の千里さん(33)も店頭に立った。義治さんが県内外で修行を積み、やっと開いた店で、3姉妹も店とともに育ってきた。開業当初は経営がなかなか軌道に乗らず、店の営業だけでなく、弁当の訪問販売も行った。3姉妹も幼いころから、仕事に奮闘する2人の背中を見てきた。
 義治さんが病気に倒れ、初美さんが厨房(ちゅうぼう)に立つこともあった。5年前には大阪で暮らす三女の千里さんが、肝臓の病に倒れたこともあった。
 「阪大病院に来てください」。病院からそう言われ、店を閉め、家族全員で大阪に向かった。医者からは肝移植が必要と言われ、次女の千春さんが肝臓を提供した。店は1カ月以上、閉めざるを得なかったが、お客さんが離れることはなかった。
 山城さん夫妻は今後、今までできなかった旅行など、2人の時間をゆっくりと過ごす考えだ。3姉妹は「30年間、お疲れさま。これからは自分たちのことだけを考えてね」と顔をほころばせた。