国の戦災調査に沖縄戦記述なし 総務省「理由は不明」


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 総務省が1977~2009年度まで日本戦災遺族会に委託して作成した「全国戦災史実調査報告書」で、沖縄戦の被害についての記述が盛り込まれていないことが8日までに、社民党県連の調べで分かった。沖縄戦の被害については、1949年に政府の経済安定本部(当時)がまとめた「太平洋戦争による我国の被害総合報告書」でも盛り込まれていない。同県連は戦後70年を経た現在も政府が沖縄戦の被害を体系的に調査していないとして、10日に内閣府を訪問し、今後の対応の必要性などについて申し入れる。

 総務省の全国戦災史実調査報告書は年度ごとにテーマが設けられ、都市の空襲の状況、学童疎開の記録、など幅広く調査されているが沖縄の状況は調査していない。社民党県連によると総務省は「沖縄が対象外とされた理由は定かではない」と説明し、別で沖縄に特化した調査があるかについても「承知していない」と述べた。1977年に調査された都市の空襲の状況については、死没者数が100人以上の都市の実地調査をしているが、668人が死亡した「10・10空襲」の記述はない。81年の学童疎開の調査でも、対馬丸事件をはじめ沖縄の学童疎開の実態には触れていない。
 社民党県連は6日に浦崎唯昭副知事を訪ね、国に沖縄戦の被害実態の把握を求めることについて、県の協力を求めた。浦崎副知事は担当部署に国と協議をするよう指示したという。県連の仲村未央県議は「国が被害を記録として残さない限り、戦後100年を迎えるころには被害の実態もなかったことにされないかと危惧している」と述べた。