辺野古作業着手1年 作業中断も監視継続


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 【辺野古問題取材班】普天間飛行場の移設に伴う名護市辺野古への新基地建設で14日、海上作業が始まってから1年を迎えた。1年前の8月14日、沖合に海上保安庁の巡視船が配され、沖縄防衛局の警戒船や海保のゴムボートなどが大浦湾を埋め尽くす中、浮標灯や浮具の設置が開始された。

 防衛省などによると、ボーリング調査は予定されている24カ所のうちことし6月26日時点で陸上部5カ所、浅瀬7カ所、深場4カ所の計16カ所で終了した。一方、残りの8カ所のうち、4カ所に着手したが、残り4カ所は作業に取り掛かっていない。同月30日以降、台風の接近などでボーリング調査は実施されていない。調査の完了期限は3回変更され、2回目の変更期限だった6月末から9月末に延長されている。
 政府は10日から新基地建設の工事を停止し、県との集中協議を始めた。

◆04年は作業断念 政府、反対排除に重き
 米軍普天間飛行場の辺野古移設をめぐり、沖縄防衛局は2014年8月14日、浮標灯(ブイ)や浮具(フロート)を設置するなどの海上作業に着手した。安倍政権は作業開始に当たり、周到に準備を整えてきたが、同年12月に移設反対を掲げる翁長雄志知事が誕生した。この1年の途中から国と県の立場の違いが鮮明となり、政治的な動きも活発化している。
 安倍政権は04年に国がボーリング調査に着手した際は住民の反対運動で断念した経緯がある。今回の海上作業着手で政府は「同じ轍(てつ)は踏まない」(防衛省幹部)として反対運動の排除に重きを置いた。14年6月20日、キャンプ・シュワブ沿岸域で常時立ち入りを禁止する水域を大幅に広げることを日米合意した。作業が開始される前には浮標灯や浮具を設置し、8月17日に海底ボーリング(掘削)作業を開始した。
 掘削作業開始を受け、移設容認に転じた仲井真弘多前知事は8月28日に掘削調査や本体工事に伴う国の岩礁破砕申請を許可した。だが政府は11月の県知事選や12月の衆院選を前に、10月30日から作業を一時停止し、15年3月12日まで再開しなかった。
 一方、県政では、14年11月16日投開票の県知事選で辺野古移設に反対する翁長雄志知事が仲井真氏に約10万票の大差で当選した。翁長氏の当選で潮目が劇的に変わった。
 就任後の翁長氏は「あらゆる手法を駆使」して新基地建設を阻止すると明言する。ことし2月には掘削作業開始に伴い国が投下したコンクリートブロックが岩礁破砕等許可区域の外でサンゴ礁を破壊した可能性が高いとして、米軍の臨時制限区域内での潜水調査許可を求めると同時に、調査終了までの作業中断を防衛局に指示した。だが防衛局側は農相に不服審査を請求し、農相は知事の指示の効力を停止するなど、応酬を先鋭化させている。
 一方、翁長知事は13年12月に仲井真氏が承認した埋め立て申請の過程を検証する第三者委員会を設置し、第三者委は7月16日、承認手続きに「瑕疵(かし)があった」と答申した。国と県は今月10日から辺野古移設に関する1カ月の集中協議期間に入った。12日に菅義偉官房長官が来県し、第1回の協議が開かれたが、議論は平行線に終わった。この期間中に移設問題に変化が生じるかに注目が集まっている。

建設予定地周辺の海域をカヌーで航行して新基地建設反対の意思を示す市民たち=4日、名護市辺野古沖
辺野古新基地建設の海上作業をめぐるこの1年の動き クリックで拡大(PDFファイル4.62MB)