『ソテツをみなおす』 文化、歴史に広がる関わり


社会
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『ソテツをみなおす』 安渓貴子・当山昌直編 ボーダーインク・2000円+税

 面白くて、ためになる1冊が出た。本書は、サブタイトルにあるように「奄美・沖縄の蘇鉄(そてつ)文化誌」である。

 収録されている論文やコラムは安渓貴子、安渓遊地、上江洲均、木下尚子、当山昌直、豊見山和行、早石周平、前田芳之、町健次郎、盛口満の十人による16篇で、三つの章に編集されている。第一章は「南島の自然と文化」、第二章「激動の歴史の中で」、第三章が「もう一つの未来へ」となっている。
 第一章では、現在の暮らしの中でソテツとの関わりが紹介されている。周知のように、ソテツには「サイカシン」という有毒成分が含まれている。安渓貴子は、「ソテツの三つの毒抜き法」を調査して丹念に報告している。そして、主要な三つのタイプの分布を奄美から与那国まで図表にまとめて発表している。
 一方、木下尚子はコラムで「五千年前の沖縄にもソテツが存在したこと」の興味深い話題を提供している。
 第二章は、ソテツとの歴史的関わりについて論じられている。豊見山和行は古文書を分析して「琉球王府による蘇鉄政策の展開」を明らかにした。そして「王国末には沖縄島と周辺の島々だけで七五万五一五一本の蘇鉄が植樹されていた」と紹介している。
 また、上江洲均は久米島の古記録から「『蘇鉄かぶ』のこと」を論じている。盆栽用の「蘇鉄かぶ」は久米島の住民には貢納物として大きな負担であったということだ。
 第三章「もうひとつの未来へ」では、今後のソテツ・自然との関わり方について提言がなされている。とりわけ安渓貴子・盛口満の「ソテツ文化の継承」が熱い議論を呼び掛けている。
 私たちは、本書でソテツ文化の歴史と空間的広がりを知ることができる。今後は、どのように「ソテツ文化を継承」できるか。多いに議論し実践していきたいものである。(高良勉・詩人、沖大客員教授)
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 あんけい・たかこ 愛知県生まれ。生態学専攻。山口大学・山口県立大学非常勤講師。理学博士。
 とうやま・まさなお 1951年、那覇市生まれ。動物学専攻。沖縄国際大学南島文化研究所特別研究員。