翁長知事講演要旨 知事帰国講演


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 8月10日~9月9日までの1カ月、(辺野古新基地の)工事を止めた。その間、5回の集中協議で私は沖縄の問題をいろんな角度から話したが、政府側からほとんど返答はなかった。

 菅義偉官房長官は4月に最初に話してから沖縄の歴史を含め私が一番思いを話した方だが、集中協議の最後に私の話は通じませんかと聞いたら、「私は戦後生まれなので沖縄の歴史はなかなか分からないが、19年前の日米合同会議の辺野古が唯一というのが私の全てです」という話だった。お互い70年間も別々に生きてきたような感じがしますねと私は言った。
 私が県外移設を求める理由を簡単に言うと、普天間は戦後、住民が収容所に入っている間、または銃剣とブルドーザーで米軍が取り上げた土地だ。本島の18%を占める基地は全て強制接収だ。私たちが差し出した土地は一つもない。
 辺野古新基地は形とすれば沖縄側が了解したという形だが、前知事も4年前の選挙では「県外移設」と言って当選した。ある意味、県民に約束したことを破って埋め立て承認をした。
 昨年の選挙でもって、名護市長選、知事選、衆院選において新基地は造らせないという沖縄の民意を出す形で(新基地建設を)否定した。原点は強制接収である。
 稲嶺恵一知事が普天間の辺野古移設を了承したのは、軍民共用、15年使ったら沖縄に返すとの条件付きだった。1999年、橋本竜太郎内閣は知事、名護市長の言うことは尊重すると閣議決定した。
 しかし小泉純一郎内閣は2006年に99年の閣議決定を打ち消した。沖縄県の条件もほごにした。だから「それを原点とするのはおかしい」と菅官房長官には話した。
 中谷元・防衛相とは抑止力で議論をした。中谷さんは中国が大変脅威だ、自衛隊のスクランブルも2、3倍になっているので、沖縄にミサイルを配備し、自衛隊も宮古、石垣に数百人程度配置したいと言った。
 冷戦時代、沖縄(の基地)は要石として必要だといわれていたが、あれから40年。中国脅威といっても、冷戦構造に比べてどれだけ脅威かというのは何にも説明がない。
 抑止力というがなぜ沖縄の基地が抑止力となってホルムズ海峡や南沙諸島を守らんといかんのか、と聞いたが、中谷さんは(沖縄以外の)他の知事、市長は(基地を置くのに)反対するんだと言って取り合わない。沖縄は3年前、全41市町村長、議会議長、全県議がそろって反対の要請書を出したが一顧だにされない。
 米国のジョセフ・ナイ元国防次官補やアーミテージ元国務副長官やマイク・モチヅキ教授は、沖縄は中国が近いから危ない、ミサイル一発で沖縄全体が、普天間や嘉手納が沈むので海兵隊は豪州やハワイ、グアム、本国に置いて、有事の際に沖縄に来た方が柔軟性があって、アジアの安定に有用だというが、(日本政府は)聞く耳を持たない。
 沖縄にミサイルが飛んできたらどうするか、と私が聞いたら中谷さんは、ミサイルはミサイルで打ち落とすと。それを聞いたとき、沖縄県を領土としか考えていない。140万人が住んでいること、70年前に日本軍と一緒に戦争で10万人以上が亡くなったことの反省が全くないと思った。
 岸田文雄外相との話。歴代知事が基地問題でワシントンDCに行くと、米側は「日本の国内問題だから日本政府と話をしろ」と言う。時の政府に話すと「後ろから米国が嫌だと言っている」と言う。たらい回しにされる。
 日本は本当に独立国家だろうか。沖縄県が基地を預かって日米地位協定の壁も分かる中で日本の在り方がよく見える。
 安倍晋三総理と話した。世界一危険という普天間基地について、辺野古が唯一で、辺野古を造らさないなら普天間を固定化すると言うが、本当に世界一危険な基地を固定化するつもりなのか、と聞いたら総理は何も言わない。大変おかしなものだ。
 最後に山口俊一沖縄担当相との話。沖縄が苦しんでいるのは本土の方々に、沖縄は基地を預かっているからたくさん振興策をもらっていると誤解がある。振興予算3千億円は、他都道府県がもらっている予算の上に3千億円もらっていると誤解している。
 全く違う。沖縄は27年間、日本でも米国でもない治外法権の中で国会議員も1人も出せず予算の取り方が分からないから、沖縄開発庁が間に入ってまとめて予算を取る制度になった。46都道府県は各部がそれぞれ予算を取る。
 沖縄県の地方交付税は全国の16位、国庫支出金は6位だ。特段、突出していない。なぜ上位かというと27年間、全く顧みられなかったから道路も認可保育園もほとんどなかった。それを本土並みに是正するため高率補助などができたわけで、突出していない。
 那覇市長時代、全国市長会で基地問題を訴えたら沖縄さん、基地で振興策をもらったらいい、うらやましいと言われる。それに反論するのは簡単じゃない。
 5閣僚と話をして、これはぜひ国際社会にも訴えなきゃいけないと今回、国連人権理事会で発言させていただいた。