集団死の壕、真実知って 戦争体験を寄贈


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戦争体験記を村に寄贈する並里千枝子さん(右)=9月25日、伊江村役場応接室

【伊江】沖縄戦で激しい地上戦が行われた伊江村で、西江上区にあるユナッパチク壕で起きた「集団自決」(強制集団死)や、長年苦しめられた戦争トラウマ(心的外傷)について記した本「知られざるユナッパチク壕~あの時、地の底で何が起きたのか」が8月に出版された。

 

並里さんの体験記

著者で同区出身の並里千枝子さん(79)=北谷町=が9月25日、村役場を訪れ、本を寄贈した。
戦時中、並里さんは9歳で、現在でも当時の様子が頭に浮かぶ。戦争体験者としてまだ若く、後世に伝える責務があるとして、当時の様子を活字にして残そうと、同壕で起きた「集団自決」などの記憶を思い出し、筆を執った。
戦争トラウマを抱えながら、執筆中も戦時中のことを思い出すと、下痢や嘔吐(おうと)の症状が出て、何度も手が止まり、困難を極めた。
本には戦争トラウマを研究する元県立看護大学教授の當山冨士子さんの寄稿も添えられ、並里さんとの出会いから、これまでの変化についてまとめている。
並里さんは「完成まで3年の歳月を費やしたが、多くの人に読んでもらい、壕の真実を子どもたちや多くの人に知ってもらいたい」と語った。
本は自費出版で300部発行。1300円(税抜き)。問い合わせは編集・デザイン工房プロス(電話)098(983)7322。(金城幸人通信員)