【島人の目】仲宗根雅則/花より団子


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 秋の日はつるべ落としというが、イタリアでは秋そのものがつるべ落としに素早くやって来てあっという間に過ぎ去る。印象としては夏が突然冬になる。紅葉も急ぎ足で、木々の葉が徐々に色づいていくというより、色あせてたちまち枯れ落ちていくというふうである。
 だからというわけではないが、イタリア人は日本人のように秋の紅葉をしみじみと愛(め)でたり、喜んだりすることはない。山に行けば紅葉がきれいだと知ってはいるが、そこに特別の思い入れを抱くことはないのである。当然テレビなどのメディアが紅葉の進展を報道することもあり得ない。
 イタリアの四季は日本よりも寒い方にずれている感じである。つまり春と秋が1カ月ずつ短くなって、その分だけ冬が長引く。11月末の今の北イタリアは紅葉も終わってもう冬景色である。
 ミラノ郊外にあるわが家はブドウ園の中にある。2カ月以上前に収穫の済んだブドウの木は、葉がすっかり枯れ落ちて幹だけが寒そうに並んでいる。ブドウ園の向こうには頂きに雪をかぶった標高2千メートルのカンピオーネ山がある。それを右に見ながら北東に向かってしばらく車を走らせると、そこはもう3千メートル級の山がそびえるアルプスである。空気の澄んでいる日にはわが家から山々の連なりが鮮やかに見える。
 そうやって今年もまた紅葉や雪山の景色が美しい時間が来た。でも寒い。僕はこの時期はいつも花より団子である。自然の美しさよりも沖縄の暖かさの方がありがたいと強く感じる。その点では多くのイタリア人と結構意見が合うのである。
 (イタリア在住、TVディレクター)