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故郷の名護で開催。眞栄田義次さん遺作展【島ネタCHOSA班】


故郷の名護で開催。眞栄田義次さん遺作展【島ネタCHOSA班】 名護市での展示をサポートする「おび会」の皆さん
この記事を書いた人 Avatar photo 琉球新報社

名護市出身で北海道札幌市で暮らした版画家・眞栄田義次さん(1952~2017年)の遺作展が名護博物館ギャラリーで開かれます。作品の魅力と出身地での展示に尽力した、関係者たちの取り組みを紹介します。


名護市出身で北海道札幌市で暮らした版画家・眞栄田義次さん(1952~2017年)の遺作展が名護博物館ギャラリーで開かれます。作品の魅力と出身地での展示に尽力した、関係者たちの取り組みを紹介します。

名護市田井等(旧・羽地村)生まれの眞栄田義次(まえだ・よしつぐ)さん。高校卒業後に上京、鷹美術研究所でデッサンを学んだ後、1974年にテレビ番組「秘密戦隊ゴレンジャー」の美術スタッフとして勤務しました。81年、長野県美麻村で版画家・吉田遠志さんと出会い、伝統的板目木版画の技法を学びます。84年、札幌に移住し本格的に版画家として制作活動を始めました。

眞栄田義次さん(提供写真)
眞栄田義次さん(提供写真)

作風を紹介

眞栄田さんの作品は抽象的で繊細な表現が特徴です。どんな内容を表現しているのか、気になったので、眞栄田さんの制作を手伝っていた経験がある友人・宮田喜代志さん(熊本県在住)に連絡を取ってみました。宮田さんが遺作展に合わせて作った資料から、少しだけ作風をひも解きます。

眞栄田義次さんの作品の例。あらゆるものに対する関心と、やさしい性格が作り出した、多視点的な表現が特徴です(撮影:山岸靖司さん)
眞栄田義次さんの作品の例。あらゆるものに対する関心と、やさしい性格が作り出した、
多視点的な表現が特徴です(撮影:山岸靖司さん)

多くの作品に共通するのは、観察に基づいた自然の表現と、環境破壊を止めない現代社会への憤りや懸念、未来への希望などが組み合わされていること。複数の視点や感情が一枚の作品に収まっています。特に分かりやすいのは、宮田さんが「原発シリーズ」と呼ぶ作品群。いずれも「薄っぺらな紙で造ったような構造物」が絵の中心になっています。さまざまな要素を込めつつも、構図はシンプル。洗練されたアイデアを感じます。

カラーで刷った作品からは、沖縄の海へのこだわりも見て取れます。青~緑に変化する色合いで海を表現した作品がありますが、寒冷で乾燥する札幌でムラなく刷り上げるのは簡単ではありません。また、波の形状はスケッチと考察を何度も重ねて描いたそうです。

友人たちがサポート

遺作展は札幌と名護、2カ所で行われます。眞栄田さんの没後、遺品整理をしていた妻の由利子さんが、作品を発見。「これを埋もれさせてはいけない」と一念発起し、関係者たちに協力を仰いだことがきっかけでした。

展示はまず札幌市北区の「ギャラリー・エッセ」を会場に先月24日まで開催。その後、作品を移送し、名護博物館ギャラリーでの展示が10日(火)から始まります。

眞栄田義次さんの作品の例。あらゆるものに対する関心と、やさしい性格が作り出した、多視点的な表現が特徴です(撮影:山岸靖司さん)
眞栄田義次さんの作品の例。あらゆるものに対する関心と、やさしい性格が作り出した、
多視点的な表現が特徴です(撮影:山岸靖司さん)

名護での展示に協力しているのは、名護高等学校時代の友人たちと、所属した美術クラブの部員からなる「おび会」の皆さん。打ち合わせに同席すると、「学園祭で大きな穴を掘って、それを作品とした」「便器に花を生けた」など、若き日の眞栄田さんについてインパクトのある話が飛び出しました。皆さん昨日のことのように楽しそう。眞栄田さんの人柄にひきつけられ、卒業後も40年以上続く友情が、展示を支えているようです。

県外で活躍したアーティストの作品が故郷にそろう貴重な機会です。ぜひ足を運んでみてください。


眞栄田義次 木版画遺作展

会場:名護博物館ギャラリー
(名護市大中4-20-50)
期間:10日(火)~15日(日)
時間:10時~18時(最終日は16時まで)

〈取材協力〉名護博物館

(2023年10月5日 週刊レキオ掲載)