クリーム色の頭に金時豆のつぶらな瞳、パインの耳、ぽってりしたミカンの唇の中に、真っ赤なサクランボ。「名物の白熊ください」と頼むと、なんとも愛らしい生き物が運ばれてきた。思わず「かわいい」とカメラを向ける。顔を崩すのにもったいなさを覚えつつ、スプーンを入れる。練乳と金時豆の優しい甘さが口に広がった。
糸満市糸満の「いなみね 冷やしもの店」は、デザート中心に、ゴーヤー定食や豆腐ちゃんぷるーなどの食事も人気の店だ。接客は店主で長女の稲嶺米子さん(76)、調理は三女の新垣エリエさん(67)ら姉妹で切り盛りしている。
白熊は、約30年前に糸満小学校近くで営業していた前身の店「まるみつ」時代からの名物。練乳味のかき氷の下に、手作りの金時豆とだんごが隠れており、基本は沖縄の「ぜんざい」だ。学校帰りの高校生らの来店が多かった「まるみつ」時代、客の要望で顔を作り始めた。耳をミカンにしたり鼻をサクランボにしたりと、クマの表情はバリエーションを付けている。
練乳味のかき氷をフルーツなどで華やかに彩る鹿児島の名物「しろくま」との一番の違いは、柔らかく煮た金時豆と手製のだんごの味わいのようだ。
食後に白熊を頼む地元客のほか、SNSで白熊を発信する目的で訪れる観光客も多い。米子さんらは「白熊を見て『かわいい』『来て良かった』と喜んでもらえるとうれしいですよね」とほほ笑んだ。日中は暑さも残る沖縄。白熊から涼を感じに出かけてみてはどうだろうか。
午前11時~午後6時半。火曜定休。糸満市糸満1486の3、電話098(995)0418。
(岩切美穂)
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