サバニ、追い込み網漁、夜の潜水漁… 石垣の伝統漁を描いた迫力の鉛筆画が絵本に 漁師の故・山城さんの遺作


サバニ、追い込み網漁、夜の潜水漁… 石垣の伝統漁を描いた迫力の鉛筆画が絵本に 漁師の故・山城さんの遺作 「海にいきる」を出版した立夏書房代表の西野嘉憲さん=2月28日、琉球新報社
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 【石垣】石垣島登野城生まれの海人(漁師)で鉛筆画家の山城久雄さん(1941―2021)の作品を絵本にした「海にいきる」(立夏書房)がこのほど出版された。山城さんは伝統漁船のサバニや追い込み網漁、夜の潜水漁など半世紀前の石垣島の漁の風景を鉛筆画で表現した。自身の海での体験を迫力ある筆致で描いている。

 立夏書房代表の西野嘉憲さんは「人間の生きるたくましさ、力強さをこの絵本から感じてもらいたい」と魅力を語る。

「海にいきる」より「荒れる海に浮かぶ船」

 絵本は、船出から漁場までドキュメンタリーのような構成で描かれ、迫力ある漁の様子や俯瞰(ふかん)した場面など多彩な構図で描かれる。遭難しかかっている漁師を助ける迫真の場面など鉛筆画ならではのち密さで臨場感を表している。作品の裏に山城さんが記したメモ書きを文章にして作品に添えている。

 山城さんは、1989年にも絵本「海をみた」(FUSAKO出版)を出版。中学生の頃から45年にわたって海人(うみんちゅ)として生き、40歳を過ぎた頃から漁の合間を見て船上で描くようになったという。現在、残された作品は3千枚に上る。

 大阪出身の西野さんは、写真家として石垣島を拠点に活動する中、3年前に山城さんの作品に出合った。何らかの形で発表しようと自ら出版社を立ち上げ、助成事業などの協力を得て発刊にこぎつけた。西野さんは「昔の海人の様子など絵本を通して、今の子どもたちにも広く知ってほしい」と話した。

 同本は書店やインターネットでも購入できる。2200円(税込)。問い合わせは琉球プロジェクト、電話098(865)5100。