那覇市松山の県立那覇商業高校近くにひっそりとたたずむ築64年の木造平屋の建物が、土地の賃貸借契約終了に伴い5月末までに立ち退かなければならなくなっている。
建物には杉や松など県外から取り寄せた上質な木材が使用されており、家主の柳生徹夫さん(78)は「取り壊すのはもったいない。思い入れのある建物であり、古民家として利活用してほしい」と語り、移築を希望する人を募集している。
建物は徹夫さんの父で山口県出身の四郎さん=故人=が住宅として建てた約26坪の木造平屋。園芸業を営んでいた四郎さんが沖縄に引っ越したのは1935年ごろで、徹夫さんが中学3年の時に、那覇市松島町(現在の那覇市松山)に家を建てた。徹夫さんは高校卒業まで同建物で過ごしたという。
建物の状態を確認した1級建築士の福村俊治さんは「接着剤を使わない伝統的な木組みの技法が使われており、沖縄では貴重な建物だ。全部ではなくても一部分でも移築することは可能だ」と指摘する。徹夫さんらによると、シロアリなどの被害は確認されていないという。床の間には茶をたてるための「炉」があり、玄関横には茶室につながる「にじり口」も設けられている。
かつて、徹夫さんの母が茶道や生け花の教室として使用していた。その後、徹夫さんが小料理屋を営んでいたが、2017年ごろに店を閉じ、以来空き家となっていた。徹夫さんは「お店を始めたい方などに利活用してほしい。昔の日本家屋に興味がある方は連絡してほしい」と語った。
建物に関する問い合わせは福村さん、電話090(9568)4430。
(吉田健一)