地域の米で酒造り 米農家・朝井信行さん やんばる酒造株式会社・池原文子さん


地域の米で酒造り 米農家・朝井信行さん やんばる酒造株式会社・池原文子さん 国頭村で無農薬栽培されたひとめぼれを使った泡盛が今月発売される。その名も「まるたホワイト」。酒を仕込んだのは大宜味村田嘉里のやんばる酒造株式会社。代表取締役の池原文子さん(左)と、米農家の朝井信行さんが完成したボトルを手に笑顔を見せた。後ろに広がるのは朝井さんの田んぼ。先月植えたばかりの稲が風になびいていた=国頭村奥間 写真・村山望
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泡盛「まるたホワイト」ができるまで

地元産の米を原料に、米農家自身も参加したユニークな泡盛造りが行われている。大宜味村田嘉里のやんばる酒造株式会社と国頭村奥間の米農家・朝井信行さんの取り組みだ。もろみの仕込みや蒸留など、主要な工程に記者も立ち会った。試行錯誤しながら酒造りをした関係者たちの姿をリポート。完成した泡盛「まるたホワイト」の味わいも紹介する。

2月上旬、やんばる酒造の工場に朝井信行さんの米が運びこまれた。昨年11月に収穫したひとめぼれ。無農薬で栽培された、今回の主原料である。

朝井さんの米を使った酒造りは2度目。昨年の「まるたホワイト」も好評で、すぐに完売している。前回はやんばる酒造の社員だけで製造したが、今回は朝井さんも工程に関わることになった。人手のいる作業には、朝井さんが所属し、伝統食に関する活動を行う「スローフード琉球」のメンバーも参加した。

酒造り初日、もろみにする米を準備する(2月5日)
酒造り初日、もろみにする米を準備する(2月5日)

人の手で仕込む

酒造り初日は、もろみの仕込み。米を浸水させ、蒸し、黒麹(くろこうじ)を加え、保温する。

米の扱いは微調整の連続だった。粘り、硬さを抑えて均一に蒸す。蒸した後は混ぜるなどして40度近くまで冷ます。塊になった米は、黒麹が入りやすいよう手でほぐす。数人がかりでも一苦労だったが、話し合いながら、和気あいあいとした雰囲気で作業は進んだ。

もろみの確認をする朝井さん。保存容器を開けると甘い香りが広がった(2月17日)
もろみの確認をする朝井さん。保存容器を開けると甘い香りが広がった(2月17日)

今回の泡盛は日本米を使い(一般的な原料はタイ米)、50キロという小ロットで仕込むため、やんばる酒造にとっても難しい部分があるそうだ。肌感覚を頼りにした工程が多くなったことで、昔ながらの酒造りをうかがい知ることもできた。

「小さな酒造所だからできる、実験的な試みです」

そう話したのは、やんばる酒造代表取締役の池原文子さん。わくわくとした心境が伝わってきた。

米の味わい光る

3月下旬、もろみの状態を見極めて蒸留が行われた。この工程では、もろみの入ったタンクに蒸気を注入。アルコール分を分離して、純度の高い酒を得る。やんばる酒造が一昨年に導入した「単式蒸留器」が使われた。味や香りを細かく調整できる特注仕様。従来とは違う酒造りを後押しする設備だ。

蒸留中は成分の測定を何度もする。蒸留前半と後半で、酒の味わいが変化するためだ。試飲もした結果、前半に出た酒と後半に出た酒をブレンドする「無加水」の手法で完成させることが決まっ見極めて蒸留が行われた。この工程では、もろみの入ったタンクに蒸気を注入。アルコール分を分離して、純度の高い酒を得る。やんばる酒造が一昨年に導入した「単式蒸留器」が使われた。味や香りを細かく調整できる特注仕様。従来とは違う酒造りを後押しする設備だ。

やんばる酒造の池原静さん(右から2人目)が酒精計を使い、蒸留中のアルコール度数を測定する。蒸留で出た酒かすは、朝井さんが譲り受け、田んぼの肥料として再利用する(3月27日)
やんばる酒造の池原静さん(右から2人目)が酒精計を使い、蒸留中のアルコール度数を測定する。蒸留で出た酒かすは、朝井さんが譲り受け、田んぼの肥料として再利用する(3月27日)

蒸留中は成分の測定を何度もする。蒸留前半と後半で、酒の味わいが変化するためだ。試飲もした結果、前半に出た酒と後半に出た酒をブレンドする「無加水」の手法で完成させることが決まった。蒸留後半まで良質な酒が出なければできない手法であり、原料の良さも示している。

そうしてできあがった「まるたホワイト」。米の香りとまろやかな甘みが持ち味だ。後味はすっきり、日本酒にも似ているという。

「みんなで造ったから、今回はさらにおいしいね」

出来上がったボトルを手に朝井さんがほほ笑んだ。生産者のつながりと、手作業を大切にした酒造りはまだ始まったばかり。稲や古酒を育てるように、じっくり続けていきたいそうだ。

(津波典泰)

商品情報と問い合わせ

「まるたWHITE」(3000円)。やんばる酒造直売所と通販サイトで数量限定、予約販売。
本日から予約可能。

問い合わせ:TEL 0980-44-3297(やんばる酒造株式会社)

(2024年4月11日付 週刊レキオ掲載)