【うるま】うるま市教育委員会(嘉手苅弘美教育長)は、ハワイに移民した県系人がブタ550頭を沖縄に届け、戦後の困窮を救う一助となった史実を漫画にした。タイトルは「安慶名良信物語」。4月23日、うるま市役所で贈呈式が行われた。市内の小学校と中学校へ届け、子どもたちに故郷のために奮闘した偉人の史実を知ってもらう。
漫画は市具志川出身の安慶名を主人公に、戦争で故郷・沖縄が食糧難に陥っていることを知った県出身者が、募金活動に奔走し、台風などの困難に遭いながらも沖縄へブタを送り届けた事実を忠実に描いた。支援はブタにとどまらず、衣類や野菜の種、学用品など多岐にわたり、戦後の復興に大きく貢献したことも紹介した。
市では、ブタがホワイトビーチに陸揚げされた9月27日を「海から豚がやってきた記念日」に制定するなど、継承に努めている。しかし、子どもたちに十分に行き届いていないのが課題だった。以前、絵本として描かれたこともあるが「絶版となり、子に届く資料がなかった」(嘉手苅教育長)と言う。
今回の漫画制作は、B&G財団(東京都)による郷土の偉人を漫画にする事業に採用され、助成を受けた。製作委員会を立ち上げ、委員に専門学校生や中部農林高校の生徒を加えるなど、製作の時点から若い世代への継承を意識したという。表紙は三つの候補の中から、小学生に選んでもらった。約6か月で完成した。
製作に携わった布哇(ハワイ)海豚顕彰会代表の浜端良光さんは「みんなの知識と協力が結実した」と出来栄えに満足げな様子。高江洲朝美・具志川自治会長は「子どもたちに地元の誇りを知ってもらえたら」と願う。
漫画は市内の小、中学校に配布され、教材として活用し出前講座なども開く予定。B&G財団のホームページでも無料公開している。
(玉城文)