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40年越し夢 横綱に初挑戦 うるま・伊波さん あす全島闘牛 重量級の貴花大獣王


40年越し夢 横綱に初挑戦 うるま・伊波さん あす全島闘牛 重量級の貴花大獣王 沖縄最重量の愛牛「貴花大獣王」と全島闘牛重量級王座に挑戦する伊波盛明さん=8日、うるま市
この記事を書いた人 Avatar photo 新垣 若菜

 うるま市石川伊波の伊波盛明さん(66)が、12日に開催される春の全島闘牛大会の結びの一番である重量級王座戦に、愛牛「貴花大獣王(たかはなだいじゅうおう)」と参戦する。牛主となった25歳からの夢である「いつかは横綱」の座へ40年目にして初めて挑む。「もしかしたら最初で最後かもしれない。大獣王も今が一番脂が乗っている。思い切りぶつかっていきたい」と意気込む。

 順風満帆な闘牛人生ではなかった。同級生らとお金を集めて手に入れた最初の牛は4敗、2頭目も2敗と6連敗からのスタートだった。これまで優れた牛を世話することもあったが、足のけがで機会を逃すなど全島重量級王座への挑戦権が巡ってくることはなかなかなかった。

 そんな中で、大獣王と出合った。当初は別の牛舎で世話されていた。強豪牛を相手に積極的にぶつかる姿を見て、伸びしろを感じたという。過去にも類を見ない1300キロという巨体も魅力的だった。「この牛ならきっと横綱になれる」。強くそう感じ、牛舎に迎え入れた。

 規格外の体格のため、ぶつかり稽古の相手を探すことは厳しく、海での散歩で足腰を鍛え、鉛を着けて首を鍛えるなどのトレーニングを積み、地道に勝利を重ねた。

 「全島重量級の挑戦牛に」。牛飼いとなって40年、念願の瞬間だった。「もう自分にはその機会はないのかもしれないと思っていたから本当にうれしくて」と満面の笑みを見せる。11連勝無敗で初防衛が懸かる新力Babyに挑戦する。入場曲は、昨年他を寄せ付けない強さで優勝したプロ野球チーム・阪神タイガースにあやかって「六甲おろし」を流す。「本当は巨人ファンなんだけど、もう勝ってほしいから何でも良いよ」と笑う。

 当日は、勢子(せこ)としてともに闘う。膝も痛むというが、テーピングで固定して臨む。「若い者にはまだまだ任せられないよ。自分の牛だしね。俺を男にしてくれよ」。そう語り、愛牛の頰を包み込むようになでた。

 (新垣若菜)