【国頭】1954年3月に撮影された国頭村伊地区の風景写真が5月16日、同区に寄贈された。米国アリゾナ州在住の男性が収集した写真で、仲介者が伊地区公民館で辺野喜通夫区長に手渡した。国頭村文化財保存調査委員の宮城樹正さんが立ち会った。
収集したのは、米軍嘉手納基地に配属され、約5年間沖縄に滞在した経験があるドン・キューソンさん(81)。配属当時、趣味で沖縄の景色などを撮影し、帰国後も沖縄の写真を収集していた。現在も米公文書館などで、沖縄の写真や資料の収集を続けているという。
写真には赤瓦やかやぶきの民家、未舗装の道路、段々畑などが写り、当時の人々の暮らしが分かる。海岸沿いには現在より広い砂浜が残る。コダクロームのカラー写真フィルムで撮影されたもので、撮影者は不明。キューソンさんが帰国後に収集した中から発見された。
キューソンさんは、撮影場所の集落名などが知りたかったが特定できず、SNSで情報提供を求めた。
その投稿が読谷村在住のラブ・オーシュリさん(71)の目に留まった。オーシュリさんは米国生まれで、沖縄に移住して約50年。写真家・作家・外国人から見た沖縄の無名評論家として活動している。趣味で長年やんばるを撮影し、何度も伊地区を訪れていたため、一目見て伊地区であることに気付いたという。
オーシュリさんは、70年前としては珍しい、鮮明なカラー写真に感銘を受け、すぐにキューソンさんとメールでやりとりを開始。伊地区民のおじーやおばーに見せてあげたい旨を伝えた。キューソンさんも、写真をパネルにして伊地区にプレゼントすることに同意したという。
写真データの提供を受け、オーシュリさんはラミネックスセンター(沖縄市)へパネルの制作を依頼。横68センチ、縦46センチの写真にフレームを付け、伊地区へ届けた。オーシュリさんは「このような美しい写真は大発見であり、地元住民が新築公民館の壁に飾り、楽しんでくれることを願っている」と話した。
辺野喜区長は「新しい公民館が完成し、いいタイミングで素晴らしい写真をいただきとてもうれしい。いい場所に飾っておきたい。私が生まれた年と同じで懐かしく愛着が湧く。区民と一緒に大事にして、大切な宝物として後世へ引き継いでいきたい」と話した。 (新城高仁通信員)