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中傷のビラや立て看板、市民「うんざり」「政策で議論を」<激戦の先に 2024糸満市長選>下


中傷のビラや立て看板、市民「うんざり」「政策で議論を」<激戦の先に 2024糸満市長選>下 勝手連が配布した、當銘氏を誹謗中傷するビラの一部
この記事を書いた人 Avatar photo 岩切 美穂

 現職の當銘真栄氏(58)が、前市議2人と元県議1人との戦いを制した糸満市長選。當銘氏を誹謗中傷するビラが市内全域にまかれ、立て看板も至る所に設置された。市内では選挙のたび、候補者を中傷する行為が繰り返されており、市民からは「誹謗中傷はうんざりだ。政策で論議してほしい」との声も上がる。

 市有地売却や市長の議会答弁などに関する中傷ビラや立て看板が出回り始めたのは3月ごろ。「勝手に新市長を応援する会(勝手連)」と称する市民が約2万8千ある市内全世帯向けに複数の種類を配布。當銘陣営によると、看板は市内100カ所近くで少なくとも9種類が確認された。

勝手連が県道そばに設置した立て看板

 「キックバックがあったとしか思えない」などと書かれた當銘氏は「事実ではない」と否定し、「虚偽の事実を伝えることで私を落選させる狙いが明白だ」として5月17日付で糸満署に刑事告訴し、受理された。市長のパワハラで辞めたとの情報が流布された前教育長も「辞めたのは体調不良によるものだ。好き勝手に書かれて迷惑している」と語った。

 勝手連の男性(73)は取材に「キックバックがあったと断言はしておらず、そう思う人がいるという意味だ。市を良くするため、真実を市民に伝える目的でやっている」と述べた。勝手連が支持していた陣営の幹部は「中傷のビラや立て看板とのつながりは一切ない。公正公平に政策で勝負している。糸満は選挙のたびに誹謗中傷が多すぎる。そうしたことは改めてほしい」と注文した。

 市は市道の立て看板について、道路占有許可を得ずに設置されたのぼりや横断幕と同様、市道路占用規則に違反すると指摘。「撤去指示票」を貼って撤去を促しているが、撤去は設置者らに委ねられている。

 中傷が横行する現状に、市内の71歳男性は「景観上、見苦しい。警察に言っても『個人の所有物だから』と対応してくれない。特定の候補者を落選させたいという思いを通すため、一方的な中傷を誰もが目にする場に多数設置するのはどうなのか。うそを信じる市民もいる」と憤る。

 9日には糸満ハーレーも開催され、市外から多数の人が訪れた。男性は「中傷の看板が乱立し、民度が低いと思われただろう。もっと政策で論議してほしい」と嘆息し、「選挙が終わったから忘れるのではなく、同じことが繰り返されないよう条例などで規制できないか」と行政の対応を求めた。

 激しい選挙が終わり、市政には高嶺小中一貫校の早期開校や南部病院跡地の福祉・防災拠点整備、真栄里物流団地整備など課題が山積している。市の発展に向けて、各方面と連携を図れるか。當銘氏の行政運営の手腕が問われる。

(岩切美穂)