prime

21年ぶり 熱気の渦 津嘉山大綱曳き 南風原 <風・土・人 シマの伝統行事>


21年ぶり 熱気の渦 津嘉山大綱曳き 南風原 <風・土・人 シマの伝統行事> チナブに乗ってにらみ合う東西のシタク=7月27日午後、南風原町津嘉山
この記事を書いた人 Avatar photo 田中 芳

 県内で脈々と受け継がれる伝統行事の一つに、米の収穫を祝う「6月ウマチー」(旧暦6月15日)がある。南風原町津嘉山で21年ぶりに復活した津嘉山大綱曳きを紹介する。

 旧暦6月15日(6月ウマチー)後の7月27日、南風原町の津嘉山区で2003年以来、21年ぶりに開催された津嘉山大綱曳き。区民の一致団結をはかる伝統行事として継承されてきた津嘉山の一大行事に、約半年間、子どもから大人、年配者までが一丸となって取り組んできた。

鼓を叩き、歌を歌って津嘉山小学校に向かう女踊りの女性たち

 7月7日、津嘉山区民らが500人ほど集まり「綱打ち」が津嘉山地域振興資料館であった。鉦鼓隊(しょうこたい)用のわらじも同時に制作。夜7時ごろ、仕上がった綱の一部を使用して綱を曳く「メーミチ綱」が実施され、西が勝利した。

綱作りに協力する大勢の住民ら=7月7日午前、津嘉山地域振興資料館

 本番27日午前9時15分、東西の鉦鼓隊や綱頭らがビジュル御嶽(うたき)に列をなして移動し、ビジュルの前で鉦鼓隊がガーエー(競演)を行った。午後4時、道ズネーが東西の御物構広場から出発。首里王府から賜ったとされる旗頭を筆頭に、男性はブラ(ホラ貝)を吹き、ショーグ(鉦鼓)や太鼓、ドラを打ち鳴らし、女性は歌とともに鼓の音を響かせ、踊った。会場の津嘉山小運動場には区民や観客が埋め尽くした。11分44秒の熱戦の末、東が勝利した。

 津嘉山大綱曳きは旗頭や衣装、カナチ棒など全てが一から新調される。指導役の神里守さん(60)は「やり遂げたという気持ち」と目を潤ませた。「体が動く限り、伝統芸能の継承に力を尽くしたい」と語った。

大綱を引き合うカナチ人ら。
このカナチ棒も今年新調された

 津嘉山青年会会長の髙嶺結知郎さん(24)は、鉦鼓隊として参加する中で「伝統をつないでいきたい」という気持ちが高まったという。「伝統をつなぐことで地域の人とつながりが生まれ、地域の輪ができる。それは沖縄の本質的なものだと感じる」と語る。金城智明さん(40)は息子の玲さん(10)と東のシタクを務めた。金城さんは「10年後もこうやって盛り上げていけるように、若手からお年寄りまで力を合わせ頑張りたい」とほほえんだ。

(文・田中芳、写真・小川昌宏)

 ウマチーは農耕が盛んだったころの御願(うがん)行事。麦、稲、粟などの穀物に関する豊作祈願や収穫を祝う。旧暦2月、3月、5月、6月にある。

500年の歴史 絶やさぬ

 本番を迎えて感無量だ。21年ぶりで、区民が待ち望んでいたと感じる。大綱曳きは500年の歴史があり絶やすことはできない。小学生に津嘉山大綱曳きを知ってもらう学習機会を提供して、大人になっても関心を持ってもらえたらと思う。

(金城清津嘉山大綱曳き実行委員長)